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TORENDIA

枯野抄

本文約7,800字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

元禄七年冬の午後、大阪の裏座敷にて、俳諧の大宗匠・芭蕉庵松尾桃青が臨終の時を迎える。枕元には其角、去来、丈艸ら多くの門弟たちが集い、師の容態を固唾を呑んで見守っていた。末期の水をとるという儀式のなかで、死にゆく師の姿を前にした弟子たちは、各々の内面にある悲しみや嫌悪、自己の生存への不安、そして解放感といった複雑な感情を抱きながら、師との最後の別れを静かに刻んでいく。

芥川龍之介

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丈艸、去来を召し、昨夜目のあはざるまま、ふと案じ入りて、呑舟に書かせたり、おのおの咏じたまへ

旅に病むで夢は枯野をかけめぐる

――花屋日記――

元禄七年十月十二日の午後である。一しきり赤々と朝焼けた空は、又昨日のやうに時雨れるかと、大阪商人の寝起の眼を、遠い瓦屋根の向うに誘つたが、幸葉をふるつた柳の梢を、煙らせる程の雨もなく、やがて曇りながらもうす明い、もの静な冬の昼になつた。立ちならんだ町家の間を、流れるともなく流れる川の水さへ、今日はぼんやりと光沢を消して、その水に浮く葱の屑も、気のせゐか青い色が冷たくない。まして岸を行く往来の人々は、丸頭巾をかぶつたのも、革足袋をはいたのも、皆凩の吹く世の中を忘れたやうに、うつそりとして歩いて行く。暖簾の色、車の行きかひ、人形芝居の遠い三味線の音――すべてがうす明い、もの静な冬の昼を、橋の擬宝珠に置く町の埃も、動かさない位、ひつそりと守つてゐる……

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