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TORENDIA

俊寛

本文約16,200字 ・ 読了時間 約33分

あらすじ(AIが作成しました)

鬼界が島へ流された俊寛の真実を、訪ねた有王が語る。世間では俊寛の狂い死や子供との生活が噂されるが、有王は現地で目の当たりにした飾らない日常を伝える。都の政治や平家の天下を冷静に見つめ、己の信条に従い静かに暮らす姿を描く。成経や康頼が去った後も、島で孤独ながらも悠々自適に過ごす様子や、かつての出来事への述懐を通し、伝承と異なる一人の人間としての実像を綴る。

芥川龍之介

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俊寛云いけるは……神明外になし。唯我等が一念なり。……唯仏法を修行して、今度生死を出で給うべし。源平盛衰記

(俊寛)いとど思いの深くなれば、かくぞ思いつづけける。「見せばやな我を思わぬ友もがな磯のとまやの柴の庵を。」同上

一

俊寛様の話ですか? 俊寛様の話くらい、世間に間違って伝えられた事は、まずほかにはありますまい。いや、俊寛様の話ばかりではありません。このわたし、――有王自身の事さえ、飛でもない嘘が伝わっているのです。現についこの間も、ある琵琶法師が語ったのを聞けば、俊寛様は御歎きの余り、岩に頭を打ちつけて、狂い死をなすってしまうし、わたしはその御死骸を肩に、身を投げて死んでしまったなどと、云っているではありませんか? またもう一人の琵琶法師は、俊寛様はあの島の女と、夫婦の談らいをなすった上、子供も大勢御出来になり、都にいらしった時よりも、楽しい生涯を御送りになったとか、まことしやかに語っていました。前の琵琶法師の語った事が、跡方もない嘘だと云う事は、この有王が生きているのでも、おわかりになるかと思いますが、後の琵琶法師の語った事も、やはり好い加減の出たらめなのです。

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