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TORENDIA

右門捕物帖

本文約22,500字 ・ 読了時間 約45分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の浅草や両国で様々な見せ物が評判となる中、名探偵と親しまれる右門は子分の伝六に誘われ、気晴らしに出かける。一行は途中で血の手形がついた丸樫杖を発見する。右門はその杖から持ち主が座頭であると見抜き、事件の真相へと迫る。一方で、井上金八という人物が自身の境遇と殺害の経緯を語り出し、猿を使った巧妙な犯行の全貌が明らかになる。右門は持ち前の鋭い洞察力で、遺留品から着実に下手人を追い詰めていく。

佐々木味津三

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――このたびはその第十九番てがら。

前回の名月騒動が、あのとおりあっけなさすぎるほどぞうさなくかたづきましたので、その埋め合わせというわけでもありますまいが、事の端を発しましたのは、あれから五日とたたないまもなくでした。もちろん旧暦ですから、九月も二十日を越えると、大江戸もこれからがもみじの秋で、上野のお山の枝々こずえに、ちらほらとにしき模様が見えるようになるといっしょで、決まったように繁盛しだすのは浅草と両国河岸の見せ物小屋です。このとき浅草で評判とったのが、上方下りの生き人形に、隼伝之丞の居合い抜き、両国河岸のほうでは、娘手踊りに中村辰太夫が勧進元のさるしばいでした。さらでだに夏枯れどきのご難をうけたあとで、太夫元も見物も飢えきっていたときなんだから、いざ評判がたったとなると、一座の者も大馬力だが、見物客もまたたいした力の入れ方で、頼まれもしないのに、口から口へ、町内から町内へ自まえの宣伝係をつとめたものでしたから、耳八丁口八丁のわが親愛なるおしゃべり屋伝六が、たちまちこれを小耳にはさんで、たちまちこれを名人のところへ吹聴にやって来たのはあたりまえなことでした。

「ね、だんな、性得あっしゃこの秋っていうやつが気に食わねえんでね。だからってえわけじゃござんせんが、せっかくの非番びよりに、生きのいいわけえ者がつくねんととぐろを巻いていたって、だれもほめてくれるわけじゃござんせんから、ひとつどうですかね、久方ぶりに浅草へのすなんてえのもあだにおつな寸法だと思うんだが、御意に召しませんかね」

「…………」

「ちぇッ。親のかたきじゃあるめえし、あっしがものをいいかけたからって、なにもそう急に空もよう変えなくたってもいいじゃござんせんか。そりゃ、あっしゃ口うるせえ野郎です。ええ、そうですよ、そうですよ。辰みてえにお上品じゃござんせんからね。さぞやお気に入らねえ子分でござんしょうが、なにもあっしが行きたくてなぞかけるんじゃねえんだ。あのとおり、辰の野郎がまだ山だしで、仁王様に足が何本あるかも知らねえんだから、こんなときにしみじみ教育してやったらと思うからこそいうんですよ」

「…………」

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