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TORENDIA

死の快走船

本文約28,700字 ・ 読了時間 約58分

あらすじ(AIが作成しました)

岬にある白亜の屋敷で隠居生活を送る元船長の深谷は、夜な夜なヨットで沖へ出る習慣があった。ある日、深谷は海上で愛用のヨットと共に骸となって発見される。医師である語り手と知人の東屋三郎は、検死の結果から死因に他殺の疑いを抱く。東屋は屋敷に残された手掛かりと赤潮の到来から、深谷が隠密に行っていた真珠の密造と、それに伴う共謀者との対立という背後の複雑な事情を推論し、事件の真相へと迫る。

大阪圭吉

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一

太い引きずるような波鳴りの聞えるうらさびた田舎道を、小一時間も馬を進ませつづけていた私達の前方には、とうとう岬の、キャプテン深谷邸が見えはじめた。

藍碧の海をへだてて長く突出した緑色の岬の端には、眼の醒めるような一群の白堊館が、折からの日差しに明々と映えあがる。向って左の方に、ひときわ高くあたかも船橋のような屋上露台を構えたのが主館であろう。進むにつれて同じように白い小さな船室風の小屋が見えはじめ、小屋の傍らにはこれも又白く塗られた細長い柱が、海近く青い空の中へくっきりと聳えだした。邸の周囲には一本の樹木もなく、ただ美しい緑色の雑草が、肌目のよい天鵞絨のようにむっちりと敷き詰って、それが又玩具のような白い家々に快い夢のような調和を投げかける。が私達が岬へ近づくに従って、それは雑草ではなく極めてよく手入れの行き届いた見事な芝生であることが判って来た。

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