TORENDIA
パンドラの匣
太宰治
TORENDIA
パンドラの匣
本文約84,200字 ・ 読了時間 約169分
あらすじ(AIが作成しました)
結核療養所で暮らす青年・ひばりが、友人にあてた手紙の形式で、療養所の日々を語る。戦後の、希望を感じさせる、書簡体の小説。
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作者の言葉
この小説は、「健康道場」と称する或る療養所で病いと闘っている二十歳の男の子から、その親友に宛てた手紙の形式になっている。手紙の形式の小説は、これまでの新聞小説には前例が少かったのではなかろうかと思われる。だから、読者も、はじめの四、五回は少し勝手が違ってまごつくかも知れないが、しかし、手紙の形式はまた、現実感が濃いので、昔から外国に於いても、日本に於いても多くの作者に依って試みられて来たものである。
「パンドラの匣」という題に就ては、明日のこの小説の第一回に於て書き記してある筈だし、此処で申上げて置きたい事は、もう何も無い。
甚だぶあいそな前口上でいけないが、しかし、こんなぶあいそな挨拶をする男の書く小説が案外面白い事がある。
[#地から2字上げ、2行にわたる丸括弧で挟んだ2行組み](昭和二十年秋、河北新報に連載の際に読者になせる作者の言葉による。)
[#改ページ]
幕ひらく
1
君、思い違いしちゃいけない。僕は、ちっとも、しょげてはいないのだ。君からあんな、なぐさめの手紙をもらって、僕はまごついて、それから何だか恥ずかしくて赤面しました。妙に落ちつかない気持でした。こんな事を言うと、君は怒るかも知れないけれど、僕は君の手紙を読んで、「古いな」と思いました。君、もうすでに新しい幕がひらかれてしまっているのです。しかも、われらの先祖のいちども経験しなかった全然あたらしい幕が。
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