宇宙爆撃
本文約18,600字 ・ 読了時間 約38分
あらすじ(AIが作成しました)
磁気学研究所の木曾礼二郎は、地球磁力の影響が少ない赤道地帯のボルネオに新設される支所への人選から漏れ、失意の中にいる。助手のみち子が支所へ赴く中、木曾は現地からの手紙を通じて同僚たちの様子を知る。やがて、みち子と同僚の村尾の結婚を知らされた木曾は、科学の力が莫大なエネルギーをもたらす一方で、一人の狂人の手によって地球が破壊される可能性を考え、背筋の凍るような不安を覚える。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一
所長の発表が終ると、文字通り急霰のような拍手がまき起った。
その中でただ一人木曾礼二郎だけが、呆然とした顔つきで、拍手をするでもなく、頬をほころばすでもなく、気抜けのように突立っていた。
「おい、木曾君――」
ぽんと肩を叩かれて、はっと気がつくと、すでに研究所の中庭にあつめられていた所員たちの姿は、ほとんど去りかけていた。勿論、いつの間にか壇上の老所長の姿も消えてしまっている。
「どうしたんだ、ばかにぼんやりしてるじゃないか」
「……いやあ」
「はっは、腐ってるんだな、わかるよ、腐るな腐るな」
「いやあ、何も……」
「ふっふっふ、いいじゃないか、希望を持て希望を――、何も今度ぽっきりのことじゃないんだからな、きっと俺たちも行くようになるぜ」
肩を叩いた長田が、慰めるような眼で、木曾の顔を覗込んだ。木曾は、その眼から顔を外らすと、
「そんなことじゃない」
「そんなことじゃないって――、じゃあ何んだね、何んにもないじゃないか、そんなにスネるもんじゃないぜ、そんなに行きたけりゃ、所長の方へ申出て置けよ、俺は早速申出るつもりだ」
「ふむ……」
「君の分も、申込んで置こうか」
「いや、いいよ」
木曾は、はげしくかぶりを振ると、思い出したように歩き出した。
「――いいよ、自分のことは自分でする」
研究所の中庭の、杜鵑花の咲いているコンクリートの池を廻って、すたすたと自分の室に帰って行った。親切にいってくれた長田には済まないようだけれど、木曾は、とても話をするのでさえおっくうだった。早く独りになって、眼をつぶって見たかった。