TRENDIA CLASSIC
宇宙爆撃
蘭郁二郎
1 / 25
一
所長の発表が終ると、文字通り急霰のような拍手がまき起った。
その中でただ一人木曾礼二郎だけが、呆然とした顔つきで、拍手をするでもなく、頬をほころばすでもなく、気抜けのように突立っていた。
「おい、木曾君――」
ぽんと肩を叩かれて、はっと気がつくと、すでに研究所の中庭にあつめられていた所員たちの姿は、ほとんど去りかけていた。勿論、いつの間にか壇上の老所長の姿も消えてしまっている。
「どうしたんだ、ばかにぼんやりしてるじゃないか」
「……いやあ」
「はっは、腐ってるんだな、わかるよ、腐るな腐るな」
「いやあ、何も……」
「ふっふっふ、いいじゃないか、希望を持て希望を――、何も今度ぽっきりのことじゃないんだからな、きっと俺たちも行くようになるぜ」
肩を叩いた長田が、慰めるような眼で、木曾の顔を覗込んだ。木曾は、その眼から顔を外らすと、
「そんなことじゃない」
「そんなことじゃないって――、じゃあ何んだね、何んにもないじゃないか、そんなにスネるもんじゃないぜ、そんなに行きたけりゃ、所長の方へ申出て置けよ、俺は早速申出るつもりだ」
「ふむ……」
「君の分も、申込んで置こうか」
「いや、いいよ」
木曾は、はげしくかぶりを振ると、思い出したように歩き出した。
「――いいよ、自分のことは自分でする」
研究所の中庭の、杜鵑花の咲いているコンクリートの池を廻って、すたすたと自分の室に帰って行った。親切にいってくれた長田には済まないようだけれど、木曾は、とても話をするのでさえおっくうだった。早く独りになって、眼をつぶって見たかった。
蘭郁二郎の他の作品
TRENDIA CLASSIC
穴
蘭郁二郎
穴
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
足の裏
蘭郁二郎
足の裏
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
※[#「氓のへ
ん/(虫+虫)
」、第3水準1
-91-58]
蘭郁二郎
※[#「氓のへん/(虫+虫)」、第3水準1-91-58]の囁き
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
息を止める男
蘭郁二郎
息を止める男
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
休刊的終刊
蘭郁二郎
休刊的終刊
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
火星の魔術師
蘭郁二郎
火星の魔術師
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
幻聴
蘭郁二郎
幻聴
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
自殺
蘭郁二郎
自殺
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
腐った蜉蝣
蘭郁二郎
腐った蜉蝣
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
孤独
蘭郁二郎
孤独
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
舌打する
蘭郁二郎
舌打する
蘭郁二郎
TRENDIA CLASSIC
睡魔
蘭郁二郎
睡魔
蘭郁二郎