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TORENDIA

山を讃する文

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

夏期講習や湯治に飽き足らない人々に対し、名山を訪ね自然の威厳に触れる意義を綴る。著者は友人とともに甲斐の山々を巡る旅に出た。金峰、八ヶ岳、駒ヶ岳といった峻険な山岳を跋渉する中で、刻々と変化する自然の美景に身を浸し、自己を超越した同化の境地を見出す。単なる観光に留まらず、人間が名山を讃えることで自然との繋がりを再確認する営みとして、山歩きの精神的な深みとそこでの感動を叙情的に描く随筆である。

小島烏水

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🎧 山を讃する文 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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近来邦人が、いたづらなる夏期講習会、もしくは無意義なるいはゆる「湯治」「海水浴」以外に、種々なる登山の集会を計画し、これに附和するもの漸く多きを致す傾向あるは頗る吾人の意を獲たり、しかも邦人のやや山岳を識るといふ人も、富士、立山、白山、御嶽など、三、四登りやすきを上下したるに過ぎず、その他に至りては、これを睹ること、宛ら外国の山岳の如くなるは、遺憾にあらずや。

例へば東京最近の山岳国といへば、甲斐なるべくして、しかも敢へて峡中に入り、峻山深谿を跋渉したるもの幾人かある、今や中央鉄道開通して、その益を享くるもの、塩商米穀商以外に多からずとせば、邦人が鉄道を利用するの道もまた狭いかな、偶ま地質家、山林家、植物家らにして、これらの人寰を絶したる山間谿陰に、連日を送りたるものあるは、これを聞かざるにあらずといへども、しかもかくの如きはこれ、漁人海に泛び、樵夫山に入ると同じく、その本職即ち然るのみ、余の言ふところの意はこれに異なり、夏の休暇は、衆庶に与へられたる安息日なり、飽食と甘睡とを以て、空耗すべきにあらず、盍くんぞ自然の大堂に詣でて、造花の威厳を讃せざる、天人間に横はれる契点を山なりとすれば、山の天職たるけだし重く、人またこれを閑却するを許さざるなり。

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