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TORENDIA

自由画稿

本文約45,400字 ・ 読了時間 約91分

あらすじ(AIが作成しました)

著者自身の身辺瑣事や追憶、科学知識をめぐる考察を綴る随筆集。正月元旦に不可解な不機嫌を覚える老人の心理や、人間の特権である笑いと泣きの生理的現象を論じる。日常生活の些細な経験から、時代や世相の反映、そして人間心理の深淵を読み解こうと試みる。科学的な視点を交えつつ、日常の平凡な光景の背後に潜む不思議な仕組みや、人間存在の根源的なあり方を独自の感性で描き出す。

寺田寅彦

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はしがき

これからしばらく続けて筆を執ろうとする随筆断片の一集団に前もって総括的な題をつけようとすると存外むつかしい。書いてゆくうちに何を書くことになるかもわからないのに、もし初めに下手な題をつけておくとあとになってその題に気兼ねして書きたいことが自在に書けなくなるという恐れがある。それだから、いつもは、題などはつけないで書きたいことをおしまいまで書いてしまって、なんべんも読み返して手を入れた上で、いよいよ最後に題をきめて冒頭に書き入れることにしているのである。しかし今度は同じ題で数か月続けようとするのだから事情が少しちがって来る。もっとも、有りふれた「無題」とか「断片」とかいう種類のものにすればいちばん無難ではあるが、それもなんだかあまり卑怯なような気がする。いろいろ考えているとき座右の楽譜の巻頭にあるサン・サーンの Rondo Capriccioso という文字が目についた。こういう題もいいかと思う。しかし、ずっと前に同じような断片群にターナーの画帖から借用した Liber Studiorum という名前をつけたことがあったが、それを文壇の某大家が日刊新聞の文芸時評で紹介してくれたついでに「こんなラテン語の名前などつけるものの気が知れない」と言って非難されたことがあるので、今度もこうした名前は慎むほうがよいであろうと思う。いろいろ考えた末に結局平凡な、表題のとおりの名前を選むことになってしまったわけである。全くむつかしいものである。

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