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TORENDIA

暮の街

本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

銀座の街頭に並ぶ、事件に関わった女性たちの写真と、歳暮商戦に沸く華やかな装飾の対比から、当時の社会の歪みを浮き彫りにする。著者は、女性の虚栄心が事件の動機として強調される現状に疑問を呈し、個人の性格に帰結させようとする言説の危うさを指摘する。さらに、軍需産業の拡大の影で困窮する少女たちの現実と、国家的な国際文化交流との乖離を鋭く批判し、当時の日本が抱える貧弱な社会構造と文化の本質を論じる。

宮本百合子

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🎧 暮の街 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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銀座の通りを歩いていたらば、一つの飾窓の前に人だかりがしている。近よって見るとそこには法廷に立っているお定の写真が掲げられているのであった。

数日前には、前陸軍工廠長官夫人の虚栄心が、良人の涜職問題をひきおこす動機となっているという発表によって、そのひとの化粧した写真が新聞に出た。

それより前には、志賀暁子の嬰児遺棄致死罪についての公判記事が写真入りでのっており、又、解雇されたことを悲しんで省電に飛び込み自殺をしかけて片脚を失った少女の写真があった。新潟から身売娘が三十人一団となって上京した写真も目にのこっている。

これらの写真にのぼされている女の生活の姿は、昨今歳暮気分に漲って、クリスマスのおくりものや、初春の晴着の並べられている街頭の装飾と、何という際立った対照をなしている事であろう。

先頃前進座で「噛みついた娘」という現代諷刺喜劇が上演されて、好評を博した。なかに新聞記者が記事作成の上に加えられる不便をかこった科白がある。日独協定のことについて、書かれるべき感想は更に多くあるのであろうが、お定の記事が、一等国の大新聞社会欄をあれほどの場面で占め得るということは、その一面に何を暗示しているのであろう。私共は、自分等の置かれている社会とその文化とは、果してかくも低い貧弱なものであるのかと、疑わずにはいられない。

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