現実の道
本文約5,900字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
職業婦人としての経験を持つ女性が提唱する、家庭にいても何か打ち込める仕事を持つことの意義と課題を論じる。趣味や余技としてではなく、生活の支えとなり得る確かな技術を身につけることが、女性の自立や精神的な豊かさに繋がると説く。一方で、金銭目的と見なされがちな職業の現状や、仕事と職業の分裂がもたらす社会的な制約を指摘し、女性が社会的責任を伴う仕事へ向き合い、その価値を高めていく重要性を提言する。
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先日はどうも失礼。久しぶりでお目にかかったし、元気に働いていらっしゃる御様子だったので、私もたいへんいい心持でした。
ところで、あなたは大きい宿題をのこしていらっしゃいましたね。永年職業婦人としての経験をかさねて来ているあなたが、とくに、職業というのではなく、と念を入れて、一般に女のひとがもっと自分の生活感情のよりどころとして何か真に打ちこめる仕事を持つようにすすめたいと強調されたことが、あの折にも私の心に深い印象としてのこりました。
まったく全体として女の日暮しの姿を落付いて、こまかに眺めれば、そこには人生の浪費とも心づかれていないような惰性のうちに、貴い生活力と歳月との消耗がくりかえされています。娘から妻へ、妻から母へと、女の生涯は綿々としてうつりすすみつつあるのだが、自分という一人の女の生きかたにある見通しを立てて、一応はありふれたような生活の道をも辿っているという女のひとは、本当にこのおびただしい女の中で何人いることでしょう。
ひとりでいる時の気持が、たっぷりと豊富でなければ、自分の周囲に生活の暖さや、鼓舞や希望を与え得るものではありません。自分が生き、ひとを生かすために、女はますます多くの困難にうちかって行かなければならない時勢です。だから、明るい生活力を充実させる意味でも女は家庭にあっても何か一つ、中心的な仕事を持つことがのぞましいと、あなたはいっていらしたのだと思います。
職業をもって働く必要のない娘さんたちでも、昔のようにただ嫁入仕度としてあれこれの稽古事をするのでなく、一つだけはまとめた技術を身につける方がよいという考えは、進歩的な家庭の今日の常識ではないでしょうか。