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TORENDIA

若い母親

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

知人の訃報と遺された幼い子の母親の境遇をきっかけに、著者は日本の社会における母という立場と女性の生き方を論じる。男児を尊ぶ習俗や片親家庭への視線を通じ、現代の社会において女性が母として直面する多様な現実と、家庭内と職業上の労働が切り離されている現状を考察する。社会的な母性の保護が不十分であることを指摘し、働く女性の経済条件や生活の基盤に関心を向け、女性がより高い統一のために行動する必要性を綴る。

宮本百合子

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🎧 若い母親 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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今朝、茶の間へおりて行ったら、いつものように餉台の上に新聞だの手紙だのがかさねておいてあって、朝の日かげがすがすがしい。裏から勢のいい洗濯の水音がしている。それをききながら、来ている手紙を一つ一つ見ていると、その中から黒枠が出て来た。私のところは社交的なつきあいというものは少いから、黒枠は何ごとかと視線のあらたまる思いでうちかえし読んで、覚えずまあ、どうしたことなんだろう、と歎息した。その不幸の通知はある出版社につとめていた人の死を報じている。私はそこの用事を通して知り合った人であったのだけれど、この数年間割合にちょくちょく会って、何となし仕事とはべつに生活の一寸した話などもし合う間柄であった。私の心を一層傷ましめるのは、その黒枠の通知に父某とまだ若かったその人の訃を告げているのが、去年初めて生れたばかりの坊やであることである。二つの男の子が、そうやって無心なうちに自分の立場というものをきめられ生い立ってゆくにつれては、まだ若いそのひとの妻、坊やの母さんの生活ということが私たち女の心にまざまざと映ってきて、気の毒にたえられない心持がする。

亡くなったひとは、その坊やをしんから大事にしていたし、ほかの友達の身の上におこった場合についてみても、そのようにして若い母とのこされた子供が、女の子か男の子かということでは、現実の条件がなかなか複雑にかわって来る。妻であり母であるその女のひとの真情に作用して来る外部からの力も、そのひとが男の子をもってのこされたという事実で、女の子一人というときとはおのずとちがって来るのである。

そのことは、ことごとに私たちの日常の間で感じられているけれども、ついこの二三日前、弟のところで赤ちゃんが生れるについて、私たちがその名前を考えてやる役にまわった。家としての初孫だから、私の姑にあたる年よりもたのしみなわけで、子供をもたない兄息子夫婦に、名をつけさせようと思いついたのでもあったろう。

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