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TORENDIA

新しい一夫一婦

本文約5,600字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

階級対立が激化する日本社会において、真に新しい恋愛や結婚のあり方を論じる。封建的な制約や社会矛盾が男女の生活を縛る現状を分析し、一部の小市民層に見られる受動的な恋愛観や過去の思想的混乱を批判する。著者は、個人の幸福と階級の解放は不可分であると説き、厳しい社会闘争の過程で築かれる連帯こそが、未来の男女関係を真に発展させる唯一の道であることを提示する。

宮本百合子

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🎧 新しい一夫一婦 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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私たちが、恋愛とか結婚とかの問題について話す場合、特別その上に新しいという形容詞をつけて持ち出す場合、それは多かれ少かれ、従来理解され、また経験されて来た恋愛や結婚より何かの意味で豊富な、新鮮な、我々の生きる歓喜となり得るものを求めようとする心持が働いていると思う。

昨今のように、一般の社会状勢が息苦しく切迫し、階級対立が最も陰性な形で激化しているような時期に、鬱屈させられている日常生活のせめてもの明るい窓として、溌剌として、新しい恋愛がどことなし人々の心に翹望されていることは感じられる。しかも、社会の現実は進んでいて、往年の情熱詩人、与謝野晶子が「みだれ髪」に歌ったような恋愛の感情は、今日の若い人々の心には住み得ない。ましてや「万葉」の境地においておやである。中産階級の急速な貧困化、それにともなって起っている深刻な失業、インテリゲンツィアの経済的、精神的苦悩は、実際にあたって、恋愛や結婚問題解決の根蔕をその時代的な黒い爪でつかんでいるのである。この事実を痛切に自覚しない若者は、恐らく一人もないであろう。

まず根底をなす社会機構が、もっとすべての人民にとって人間的に生きる可能性を与えるようにならない限り、窮極は社会関係の最も綜合的な表現である恋愛や結婚の問題が、人類的な規範で、各人の幸福にまで発展せられないこともまた大多数の人々に、はっきり理解されていることであると思う。けれども、歴史がそこまで進む過程は実に単純でなく、容易でなく、多くの堅忍が要求される。今のように表面的にはそういう新たな歴史の建設的推進力が見にくくされているような時期には、窮乏化する小市民インテリゲンツィアが、確信をもって新たな次代の階級へ自身を移行させることが困難であると同様に、恋愛や結婚の実際に当っても、本質的な発展は非常にされにくい状態にある。だから、気分的には新たなつよい、晴やかで情趣深い恋愛が求められているとしても、男女の社会関係の実体は、ふるい世界の鎖にからみつかれている有様である。

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