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TORENDIA

火星兵団

本文約304,000字 ・ 読了時間 約609分

あらすじ(AIが作成しました)

天文学者の蟻田博士は、夜空の観測から謎の「火星兵団」という光の信号を発見する。博士は地球人類に危機が迫っていると訴えるが、周囲には信じられず大学を追われる。そんな中、少年・友永千二は博士の放送を聴き、地球を揺るがす宇宙規模の事態に直面する。地球への接近が予測されたモロー彗星に対し、月が軌道を変えて引き寄せたことで衝突の危機を脱するまでを描き、地球の未来と人類の結束の重要性を説く物語である。

海野十三

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1 奇怪な噂

もはや「火星兵団」の噂をお聞きになったであろうか!

ふむ、けさ地下鉄電車の中で、乗客が話をしているのを、横からちょっと小耳にはさんだとおっしゃるのか。

――いや全く、こいつは冗談じゃないですぞ。これはなにも、わしたち科学者が、おもしろ半分におどかしたがって言うのではないのですわい。今われわれ地球人類は、本気になって、そうして大いそぎで戦闘準備をしなくちゃならんのだ。しかるに、わしのいうことを小ばかにして、だれも信じようとはしない。これでは、やがてたいへんなことになる。わしは今から予言をする! 地球人類は、一人残らず死んでしまうだろう。第一「火星兵団」という名前を考えても、その恐るべき相手が、どういうことをしでかすつもりだか、たいがい想像がつくはずじゃと思うが――。

と、そういう話を、地下鉄電車の中で聞いたと、おっしゃるのか。

ふむ、なるほど。

そのことばづかいから察すると、そう言って自分一人で赤くなって興奮していた人というのは、からだの小柄の、頭の髪の毛も、顎のさきにのばした学者鬚も、みんな真白な老紳士だったであろう。

それに、ちがいないと言われるか。

ふむ、そうであろう。やっぱり、そうであった。その老紳士こそは有名な天文学者で、さきごろまで某大学の名誉教授だった蟻田博士なんだ。

さきごろまで名誉教授であったと言ったが、つまり蟻田老博士は、今では名誉教授ではないのだ。博士は、さきごろ名誉教授をやめたいと願い出て、ゆるされたのだ。

そういうことにはなっているが、その実蟻田老博士は、奇怪にも大学当局から、辞表を出すように命令され、むりやりに名誉教授の肩書をうばわれてしまったのだ。そんなことになったわけは、ほら例の「火星兵団」にある!

あのように「火星兵団」のことを、世間に言いふらさねば、大学当局は、なにもあの老齢の蟻田博士から、名誉教授の肩書をうばうようなことは、しなかったであろう。

まあそれほど、大学当局では、老博士が言いふらしている「火星兵団」が、ありもしないでたらめであるとして、眉をひそめていたのである。

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