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TORENDIA

久野さんの死

本文約490字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

かつてピアノを教わった久野久子さんの死をきっかけに、女性にとって情熱と、それを制御する意志や理性の両方が必要ではないかと考える宮本百合子の随筆。

宮本百合子

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🎧 久野さんの死 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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最近私の心を大きく搏ったことは久野久子さんの死です。わたしは小さい頃あの方から三年程ピアノを教えて頂いたことがあるものですからね。先生として、芸術家として、そしてまた女として考えさせられることがいろいろあったの。

それに就てではないけれど、私、女と情熱ということを思うのよ、つまり女はどうかすると情熱のために負かされはしないかと。情熱は女を生かし、みちびき、何物かを創造する力となるけれど、一方またそれを抑え、制御し、率いるだけの意志とか理性とかいうものは殊に女にとっては必要ではないかしら、情熱のために生活全体の破滅を来たすとはおそろしい事ね。

そうね、こうして自分の好む仕事をし、それによって少しずつでも生かされて行くとすれば、めぐまれた生活とでもいえるのでしょうよ。だけど創作といっても、苦しみの方が多いわ。人によっては、女は結婚を経なければ本当の人生が解らない。従って創作も本物でない、ともいうけれど、私経験というものには大した価値をおいていないのよ、ほんの小さい経験からいろいろなことを想像し、推理し、観察しておどろくべき大きな人生を見ることが出来るのですものね。

〔一九二五年五月〕

完

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