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TORENDIA

旅からのはがき

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

花巻から遠野へ向かう旅の記録を綴る。著者は花巻の宿で静養し、危険な馬車での移動を経て夜中に遠野へ辿り着く。慣れない土地での孤独感や吹雪に見舞われる道中の不安、そして到着後に遭遇した言葉の壁や極寒の地での体調不良といった旅の諸相を、友人宛のはがき形式で描く。遠野の冬の情景や、現地の言葉が通じない戸惑いを通じて、見知らぬ土地に身を置く者の心細さと日常が淡々と映し出される。

水野葉舟

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🎧 旅からのはがき / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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今、花巻に着いた

九時、今、花巻に着いた。目的地の遠野行きの馬車はすぐ出るんだが、道はずいぶん遠いそうだし、それにそういそぐわけではなし、昨晩はろくに眠れなかったから、今日は一日ここで眠ろうと定めた。こんな事なら仙台で降りればよかった、と思ってる。

ここに来て、今、S君に電報を打った。花巻。斉藤旅館にて。

寂しいもんだ

知らぬ土地の旅舎で一人ぽつねんとしているってことは寂しいことだ。僕は何だか、とんでもないところに来たような気がするほど寂しい。寂しい。だから君にはがきを書く。一層寝ちまえ? 夜八時、花巻にて、M生。

今、花巻を発つ

午前九時、前の街道に馬車が来た。今これからそれに乗って、ここを発つのだ。二三日前、遠野へ行く途中、この馬車が猿ヶ石川の断崖にさしかかるところで転覆したそうだ。それで、今朝も宿屋の人達に道の悪いこと、馬車の危険なことなどを散々に言っておどかされた。

しかし、遠野に行くのには、この馬車に乗るより外に、何の方法もないのだ。人車はあるが、六円の七円のと言ってとても僕等の手に合う筈はない。でも危険だと言われると、さすがに不安だ。旅に出るとよくこんな目に逢う。人の悪い奴等だ。でも馬車に乗るときめた。

そして、この朝からの愚痴を、君に書いたのだ。ちょうど馬車が急に動き出さないものだからね、その間に。……二日、花巻の町はずれにて、M生。

猿ヶ石川の川岸にて

あれから花巻の町はずれで、また北上川を渡った。長い長い船橋だった。今は、猿ヶ石川の岸に沿った断崖の上を通りすぎて、ちょっとした村で馬車がとまった。散々おどかされた途中は、先ず無事だった。

これから、遠野まで六里だそうだ。まだ大分ゆられなくっちゃ目的地には着けないんだ。もううんざりしている。午後二時すぎ、M生。

夜――吹雪

今やっと遠野に着いた。夜の十時半だ。

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