殺生石
本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
那須野の原で野宿を試みた徳の高い僧、玄翁和尚は、そこで石の精と名乗る女性に出会う。彼女はかつて玉藻前と名乗り、日本や他国で悪事を重ねた九尾の狐の化身であった。殺生石として残った自身の魂が深い罪により苦しみの中にいることを語り、和尚に救いを乞う。玄翁は悲劇の過去を語る彼女の訴えを聞き入れ、熱心に読経を捧げた上で、石を打ち砕くことでその霊を解き放ち、殺生石の毒による災いを終わらせる。
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一
むかし後深草天皇の御代に、玄翁和尚という徳の高い坊さんがありました。日本の国中方々めぐり歩いて、ある時奥州から都へ帰ろうとする途中、白河の関を越えて、下野の那須野の原にかかりました。
那須野の原というのは十里四方もある広い広い原で、むかしはその間に一軒の家も無く、遠くの方に山がうっすり見えるばかりで、見渡す限り草がぼうぼうと生い茂って、きつねやしかがその中で寂しく鳴いているだけでした。玄翁はこの原を通りかかると、折ふし秋の末のことで、もう枯れかけたすすき尾花が白い綿をちらしたように一面にのびて、その間に咲き残った野菊やおみなえしが寂しそうにのぞいていました。
玄翁和尚は一日野原を歩きどおしに歩いてまだ半分も行かないうちに、短い秋の日はもう暮れかけて、見る見るそこらが暗くなってきました。この先いくら行っても泊る家を見つけるあてはないのですから、今夜は野宿をするかくごをきめて、それにしても、せめて腰をかけて休めるだけの木の陰でもないかと思って、夕やみの中でしきりに見ましたが、一本のひょろひょろ松さえ立ってはいませんでした。それでもと思ってまた少し行ってみると、草原の真ん中に、大きな石の立っているのが白く見えました。
「やれやれ、これで露をしのぐだけの屋根が出来た。」
と玄翁はつぶやきながら石のそばに寄ってみますと、ちょうど人間の背の高さぐらいのすべすべしたきれいな石でした。玄翁は石の頭に笠をかぶせ、草を結んでまくらにして、つえをわきに引き寄せたまま、ころりと横になりますと、何しろくたびれきっているものですから、間もなくとろとろと眠りかけました。
するとしばらくして、眠っているまくら元で、
「和尚さま、和尚さま。」
とかすかに呼ぶ声がしました。初めは夢うつつでその声を聞いていましたが、ふと気がついて目をあけますと、もう一面の真っ暗やみで、はるかな空の上で、かすかに星が二つ三つ光っているだけでした。
「すると今しがただれか呼んだと思ったのは、気の迷いであったか。」と玄翁は思って、起き上がりもしずに、そのまま目をつぶって寝ようとしました。するとまたうしろの方で、こんどは前よりもはっきり、