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TORENDIA

鷹を貰い損なった話

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

小学時代の筆者は、硬派な級友からいじめを受ける一方で、小鳥を扱う優しい友人から鷹を譲り受ける約束をする。筆者は所持品を差し出し、鷹を飼う夢に心躍らせて待ちわびる。しかし、友人は毎回もっともらしい理由を並べて引き渡しを先延ばしにし、結局、生きている鷹は筆者の手に渡らない。本書は、この幼少期の記憶を回想し、鷹を待ち続けた経験がもたらした心理や、大人になってもなお繰り返される不可解な喪失感を綴る。

寺田寅彦

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🎧 鷹を貰い損なった話 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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小学時代の先生方から学校教育を受けた外に同学の友達からは色々の大切な人間教育を受けた。そういう友達の中にも硬派と軟派と二種類あって、その硬派の首領株からはだいぶいじめられた。板垣退助を戴いた自由党が全盛の時代であったので、軍人の子供である自分は、「官権党の子」だという理由でいじめられた。東京訛が抜けなかったために「他国もんのべろしゃ/\」だと云っていじめられた。そうして、墨をよこさなければ帰りに待伏せすると威かされ、小刀をくれないとしでるぞ(ひどい目に合わせる)と云っては脅かされた。その頃の硬派の首領株の一人はその後人力車夫になったと聞いたが、それからどうなったか一度も巡り合わずそれきり消息を知ることが出来ない。

そういう怖い仲間とはまるで感じのちがう×というのが居た。うちは何商売だったか分らないが、その家の店先に小鳥の籠がいくつか並べてあった。梟が撞木に止まってまじまじ尤もらしい顔をしていたこともあった。しかし小鳥屋専門の店ではなかったような気がする。

その×は色の白い女のように優しい子であったが、それが自分に対して特別に優し味と柔らか味のある一風変った友達として接近していた。外の事は覚えていないがただ一事はっきり覚えているのは、この子が自分にときどき梟をやろうとか時鳥をやろうとかまた鷹をやろうとかいう申し出しをしたことである。但しそれには交換条件があって、おまえのもっている墨とかナイフとかを呉れたら、というのであった。自分はどういう訳かその鷹がひどく欲しかったので、彼の申込みに応じて品は忘れたが彼の要求するものを引渡した。そうしていよいよ鷹が貰えると思って夜が寝られないほど嬉しがったものである。鷹を貰ってからのことを色々空中に画いてはエクスタシーに耽ったものと見えて、今でもなんだか本当に一度鷹を飼ったことがあるような気持がすることがある、もちろん事実は鷹などかつて飼った経験はないのである。

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