幸福のうわおいぐつ
本文約31,900字 ・ 読了時間 約64分
あらすじ(AIが作成しました)
コペンハーゲンの社交場で、幸福の女神の使いが人々に幸福をもたらすうわおいぐつを置く。この靴は、はいた者の望む時代や場所へ瞬時に運び、願いをかなえる魔法の力を持つ。しかし、心配の妖女はこれを履いた者がかえって不幸になると予言する。ある日、司法参事官が誤ってこの靴を履き、中世のハンス王時代へ送り込まれる事態が発生する。本作は、不思議な靴を手にした人々が経験する災難や願いの行方を通して、幸福の真の意味を綴る物語である。
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一 お話のはじまり
コペンハーゲンで、そこの東通の、王立新市場からとおくない一軒の家は、たいそうおおぜいのお客でにぎわっていました。人と人とのおつきあいでは、ときおりこちらからお客をしておけば、そのうち、こちらもお客によばれるといったものでしてね。お客の半分はとうにカルタ卓にむかっていました。あとの半分は、主人役の奥さんから、今しがた出た、
「さあ、こんどはなにがはじまりしましょうね。」というごあいさつが、どんな結果になってあらわれるかと、手ぐすねひいて、待っているのです。もうずいぶんお客さま同士の話がはずむだけはずんでいました。そういう話のなかには、中世紀時代の話もでました。あるひとりは、あの時代は今の時代にくらべては、くらべものにならないほどよかったと主張しました。じっさい司法参事官のクナップ氏などは、この主張にとても熱心で、さっそく主人役の奥さんを身方につけてしまったほどでした。そうしてこのふたりは*エールステッドが年報誌上にかいた古近代論の、現代びいきな説にたいして、やかましい攻撃をはじめかけたくらいです。司法参事官の説にしたがえば、デンマルクの**ハンス王時代といえば、人間はじまって以来、いちばんりっぱな、幸福な時代であったというのでした。
*デンマルクの名高い物理学者(一七七七―一八五一)。
**ヨハン二世(一四八一―一五一三)。選挙侯エルンスト・フォン・ザクセンのむすめクリスティーネと婚。ノルウェイ・スエーデン王を兼ねた。