ひこうかばん
本文約7,400字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
父の遺産を使い果たしたある商人の息子は、友人に譲り受けた不思議な鞄を手に入れる。その鞄は空を飛ぶ力を持ち、息子はそれを使ってトルコの国の王女が住む城へと向かう。やがて王女と婚礼の約束を交わした彼は、王室で物語を語り聞かせることになり、成功を収める。しかし、結婚式を控えた夜、祝いの花火によって鞄が灰となってしまい、息子は王女のもとへ行く手段を失うことになる。
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むかし、あるとき、お金持のあきんどがありました。どのくらいお金持だといって、それは町の大通のこらず銀貨で道をこしらえて、そのうえ横町の小路にまでそれをしきつめて、それでもまだあまるほどの[#「ほどの」は底本では「ほのど」]お金を持っていました。でも、このあきんどは、そんなことはしません。もっとほかにお金をつかうことをかんがえて、一シリングだせば、一ターレルになってもどってくる工夫をしました。まあ、そんなにかしこいあきんどでしたが――そのうち、このあきんども死にました。
そこで、むすこが、のこらずのお金をもらうことになりました。そうしてたのしくくらしました。毎晩、仮装舞踏会へでかけたり、お札でたこをはってあげたり、小石の代りに、金貨で海の水を打ってあそんだりしました。まあこんなふうにすれば、いくらあっても、お金はさっさとにげていってしまうでしょう。とうとうむすこはたった四シリングの身代になってしまいました。身につけているものといっては、うわぐつ一足と、古どてらのねまきのほかには、なにもありません。こうなると、友だちも、いっしょに往来をあるくことをきまりわるがってまるでよりつかなくなりました。でもなかでひとり、しんせつな友だちがいて、ふるいかばんをひとつくれました。かばんのうえには、「これになにかおつめなさい。」とかいてありました。いやどうもこれはたいへんありがたいことでした。けれど、あいにくなにもつめるものがないので、むすこはじぶんがそのかばんのなかにはいっていました。