人魚のひいさま
本文約29,400字 ・ 読了時間 約59分
あらすじ(AIが作成しました)
深海に住む人魚のひいさまは、地上の世界を夢見る心やさしく思慮深い娘である。十五歳になると海の上へ出ることを許される姉たちを待ちわびるなか、彼女は難破船から持ち帰った人間の少年の大理石像を大切にする。人間の愛情を求めて切ない苦しみを経験した末、ひいさまは自らの魂を得るための新たな道として、大空の気息となって善行を積む旅へと昇華していく物語を描く。
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はるか、沖合へでてみますと、海の水は、およそうつくしいやぐるまぎくの花びらのように青くて、あくまですきとおったガラスのように澄みきっています。でも、そこは、ふかいのなんのといって、どんなにながく綱をおろしても底にとどかないというくらいふかいのです。お寺の塔を、いったい、いくつかさねて積み上げたら、水の上までとどくというのでしょうか。そういうふかい海の底に、海のおとめたち――人魚のなかまは住んでいるのです。
ところで、海の底なんて、ただ、からからな砂地があるだけだろうと、そうきめてしまってはいけません。どうして、そこには、世にもめずらしい木や草がたくさんしげっていて、そのじくや葉のしなやかなことといったら、ほんのかすかに水がゆらいだのにも、いっしょにゆれて、まるで生きものがうごいているようです。ちいさいのも、おおきいのも、いろんなおさかなが、その枝と枝とのなかをつうい、つういとくぐりぬけて行くところは、地の上で、鳥たちが、空をとびまわるのとかわりはありません。この海の底をずっと底まで行ったところに、海の人魚の王さまが御殿をかまえています。その御殿の壁は、さんごでできていて、ほそながく、さきのとがった窓は、すきとおったこはくの窓でした。屋根は貝がらでふけていて、海の水がさしひきするにつれて、貝のふたは、ひとりでにあいたりしまったりします。これはなかなかうつくしいみものでした。なぜといって、一枚一枚の貝がらには、それひとつでも女王さまのかんむりのりっぱなそうしょくになるような、大きな真珠がはめてあるのでしたからね。