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TORENDIA

脳波操縦士

本文約15,100字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

療養のため奥伊豆を訪れた語り手は、磁力を利用した特殊な温室で栽培を行う奇人・森源と出会う。森源は温室の上部に空中線を張り、地球の磁力を利用した増穫法を実践していた。ある日、語り手は森源の家に招かれ、その屋敷でルミという女性と対面する。語り手はルミとの交流を通じて、森源がルミを脳波で操縦している可能性を疑い始め、二人の関係性と自身の心理的な動揺に苦悩することとなる。

蘭郁二郎

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森源の温室

奥伊豆――と呼ばれているこのあたりは、東京からいって、地理的にはほんの僅かな距離にあるのに、まるで別天地といってもよいほど、南国のような、澄み切った紺碧の空と、そして暖かい光線に充ち満ちていた。

こんもりと円やかに波うっている豊かな土地は、何かしらこの私にさえ希望を持たせてくれるような気がしてならない。

私は眼を上げて、生々しい空気を吸いこんだ。この、塵一つ浮いていない大気の中で、思う存分に荒々しく呼吸をし、手を振りまわして見たいような気がした。

病後を、この奥伊豆に養いに来た私は、体温表の熱も、どうやらサインカーヴに落着いて来たし、それに何よりも『希望』というものを持つようになって来たことが、偉大な収穫であった。

土埃りの、どんよりと濁った層を通してのみ太陽を見、そして都会特有のねっとりとした羊羹色の夜空を悪んでいた私には、ここに移って来ると共に、南国の空とはこんなにも蒼いものであるか、と半ばあきれてしまった位であり、其処に飛ぶ、純潔な綿雲に、健康な幻想を覚えるからであった。

だが、そうして病気の方がよくなって来るにつれて、今度は、思いがけなかった、激しい無聊に襲われて来た。あたりはまるで太陽からの光線が、一つ一つ地面に泌入る音が聴えるほどの、俄つんぼのように静まりかえった眺めであるし、吹く風すらも私の耳に柔かいのだ。自分自身を持てあました私は、許すかぎりの時間を散歩にまぎらわし、なおその上、話し相手ほしさに、飢えて居たのであった。

その頃だ、奇人、森源を知ったのは――。いささか前置きが長すぎたようであるが、その頃の私の退屈を知って置いて頂かないと、当時、誰一人として相手にしなかった森源と知り合いになったということが、どうも不自然のように思われはしまいかと惧れるからである。

森源――というのは綽名で、実は森田源一郎というレッキとした名があるのだが、村人は誰も森源、森源、といっていたし、なんだかその方が彼の風貌をしっくりと表現するような気がし、私も口馴れたその名を呼ぶことにする。

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