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TORENDIA

火の扉

本文約128,300字 ・ 読了時間 約257分

あらすじ(AIが作成しました)

信州の山村にある国民学校で、疎開児童が同級生から攻撃される事件が発生する。教員たちが議論を重ねる中、教師の北原ミユキは社会のあり方や教育を巡り周囲と衝突する。同じ頃、元軍人の家庭に育ち疎開している少年とその母は、新たな生活を求めて過酷な自然の中を歩み始める。戦後の激動する時代を背景に、現実と理想の間で揺れ動く人々の姿や、明日への希望を探る人間模様を描く。

岸田國士

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冬を待つ山河

一

もう、その年の秋も暮れようとしていた。

その年とは、長い戦いがすみ、来たるべきものが来たり、きびしい祖国の運命を告げ知らされた年である。

信州のI市に近い山村の国民学校で、きようも校長を中心に研究会が開かれ、今後の新しい、教育の問題について、まだなんとなく地につかない討論をしたあとで、四五名の教員がストーブを囲んで雑談を続けていた。

「それはそうとね、きようの事件はだね、われ/\として簡単に見すごすわけにいかんと思うね」

「つまるところはさ、単に児童の群集心理といつて片づけられないわけさ。なにしろ、あの井出という生徒は、二年生にしちや、すこし生意気だでな。わしは前まえからそう思つとる。疎開児童の一種の優越感と、おやじが陸軍大佐だつていうことを妙に鼻にかけるところがあつた。それが全校の生徒の反感を買つて、きようの結果をみたんだ」

「その点はおゝいにあるね。第一、家庭そのものが、都会の生活をそのまゝこゝへもつて来て、少しも土地の生活に順応するつていう風がないらしい。そうでねえか、北原君、君は家庭訪問をよくやるようだが……」

同僚の一人から北原と呼ばれたのは、まだうら若い女教師で、健康そうな血色にやゝ疲れをみせ、穏やかな微笑のうちにひと一倍勝気な性分を強いて包んでいること、がわかる。

「その通りですに」

と、彼女は平然として言い放つた――

「しかし、そのことは別にきようの事件と関係はないじやないですか。わしの受持だからいうじやないですけど、あの生徒を、大きなもんが寄つてたかつてかまうなんて、まつたくひきようですに。生意気かどうかは、見る人によつてだと、わしは思います。軍人の子だということが、あの子の罪ですかしら? お前のお父ッつあんは、戦争に負けた軍人じやないか! 悪いことをして威張つとつた軍人じやないか! 戦争犯罪人の子、やあい! こう言つてはやしたてたのは、いつたいだれでしよう? あなた方の教え子ですに。わしども長い間教えた子ですに。井出は、教員室を出ると、泣いて家へ走つて帰りました。わるさをした子供たちは、あの通り、まだ校庭で芝居のまねをしとるじやありませんか!」

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