ふらんすの女
本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
マダムの応接間から公園、地下電車、あるいは商館の売場まで、様々な場面で繰り広げられる男女の会話を描く。愛の告白や別れ話、日常の些細な諍いなど、恋人同士や夫婦、知人らが交わす対話の断片を積み重ねる。形式的な関係性の中にも垣間見える皮肉や本音、すれ違う感情の機微を鮮やかに切り取り、フランスにおける男女の対照的な姿や、対話を通じて浮かび上がる彼らの生活の断面を、全十六の小場面から成る戯曲形式で綴る。
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マダム用応接間にて
――あなた、旦那さんのどういふところに、一番感心してゐらつしやる?
――上手に嘘をつくところ。
――…………?
――あの人の嘘は、それや嘘らしくないの。だから、騙されてゐながら腹は立たないの。
或る日の朝
――出て行けつたら出て行け。
――出て行きますとも……後悔するんぢやありませんよ。
――後悔なんかするもんか。
――もう後悔してるくせに……。
海岸にて
――ねえ、あなた、あたしを愛してる?
――うむ、愛してるよ。
――たくさん?
――うむ、たくさん。
――きつと?
――うむ、きつと。
――こんだ、あたしに訊いて頂戴。
――なんて?
――あなたを愛してるかどうか。
――ぢや、お前、僕を愛してるかい?
――えゝ、愛してるわ。
――どれくらゐ?
――これくらゐ…………(接吻しようとする)
――まあ、待つてくれ。言葉でさ。
――言葉で…………ぢや、死ぬほど。
――…………?
――…………!
――どつちが?
波止場にて
――ぢや、六ヶ月ね、きつと?
――大丈夫だよ。それより長くなるやうだつたら呼び寄せるから…………役所の方にもその話はしてあるんだ。
――六ヶ月でも永いわ。(ハンケチを眼にあてながら)それ以上待たせたら、どんなことになるか、あたし保証しないことよ。
――(心の中にて)神よ、われを護り給へ。
劇場の廊下にて
――細君は?
――細君は旅行中だ。
――…………?
――例のと一緒にさ。
――…………?
――吾輩かい…………? 君、吾輩のボツクスを見なかつたかい?
サロンにて
――君の近作を読んだよ。大したもんだね。
――さうか。奥さんはいかゞです。読んでくださいましたか。
――えゝ、拝見しましたわ。あなたの詩は、あなたほど面白くないのね。
――ひどいなあ。
――あたしたちにはよ。
地下電車の中にて
――さ、どいて下さい。それは車掌専用の腰掛けです。
――君が立つてゐる間だけ借りたんだよ(しぶしぶ立ち上る)
――一寸の間、ね、いゝでせう(腰かける)
――いけません、それや…………。
――(腰かけたまゝ)今日はね、ムウドンの親戚へ用があつて行つたんだけれど、行きも帰りも立ちどほし……くたびれちやつた。
――わたしも立ちつゞけです。