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TORENDIA

芝居の話

本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

芝居に馴染みの深い著者が、幼少期から青年期にかけて親しんだ大阪の劇場での経験や、京都で育まれた新しい芸道の歴史を綴る。千日前の「にはか」や道頓堀の「中の芝居」に通った記憶、楽屋口から舞台裏までを知り尽くした役者との関わりを回想しつつ、かつての新京極で曾我廼家などの新しい芸が育まれる過程と、当時の役者たちの芸風や変遷について詳述する。

折口信夫

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🎧 芝居の話 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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○此頃いくらか、芝居が嫌ひになれた様な気がする。性根場になつて、どうにもこらへられないで、とろ/\する事が多い。其でも尚芝居に行つて、廊下を歩く気持ちがよくて、やめられないと言ふ人もある。私もさうかと考へて見たが、廊下で知り人などに会ふのは、思つても愧しい。幸と、しげ/\出入しながら、芝居で、あんまり人に会うて、赧い顔をした事がない。私の知つた範囲には、芝居ぎらひが多いからであらう。ひよつとすると、誰にも知られずに居られるところだから、一番のう/\するのかも知れない。話をした事のない方で、YIさんなどには、ずゐぶん出くわした様だ。併し、其すら却て、静かな気分を助ける側にはたらく様だ。一度鹿児島のはと場で、国の町の電車などで、よく見かけた人に出あつた事があつた。其時の気持ちに似て居る。親代々の町人だからかも知れない。深い山や、離れ島にも行つて見たが、しん底おちついた気分になつた覚えがない。そんな静かな処で、さわだつ心が、芝居の桝に小さくなつて居ると、不思議におちついて来る。ひどい神経衰弱なのである。

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