TORENDIA
Ombra d
i Venez
ia
堀辰雄
TORENDIA
Ombra di Venezia
本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
三十六歳でドイツを離れたニイチェは、初めて訪れたヴェネチアでバロック式の館に滞在し、規則正しい生活の中で執筆活動に励む。友人ペエタア・ガストの献身的な支えを受け、散歩や粗末な食事を繰り返す日々の中で、かつて「ヴェネチアの日蔭」と題された書物を推敲する。ピアノを弾き、音楽に親しんだこの時期の体験とショパンへの傾倒、そしてヴェネチアという土地そのものが彼にとって持つ音楽的な意味を、著者の読書体験を交えて綴る。
速度
🎧 Ombra di Venezia / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ
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きのふからギイ・ド・プウルタレスの「伊太利に在りし日のニイチェ」といふ本を讀み出してゐる。忠實な傳記ではないかも知れないけれど、なかなか面白い。いま讀んでゐるところは、ニイチェが三十六七の時、獨逸を去つてはじめて伊太利に赴き、先づ最初ヴェネチアに滯在してゐた頃(一八八〇年三月―六月)の有樣を敍した一章であるが、ここに描かれてゐるニイチェの姿には、これまであまりにも屡ニイチェといふ名の下に描かれてゐるディオニソス的な人間とはかなり相違した、ずつと我々には親しみ深く思はれるものがある。私はさういふヴェネチアにおけるニイチェの姿をプウルタレスから少し抄して見よう。――