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TORENDIA

粕壁夜行記

本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

粕壁への夜行を計画した裸男のもとに、旧学友の伊藤薊山ら一行が加わり、総勢九十三名で千住大橋を出発する。道中、自作の酒入り杖で活力を養い、草加や越ヶ谷を経て粕壁の旅店を目指す。一行は疲労を重ねながらも未明に到着し、解散後は粕壁中学校での演説や牛島の藤見物を行う。本書は、著者である裸男がかつての遠足仲間たちと共に行った賑やかな夜行の様子を、道中の風景や交流を交えて綴る随筆である。

大町桂月

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🎧 粕壁夜行記 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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第三回の夜行を粕壁に爲すこととなりけるが、夜光命も來らず、十口坊も來ず、山神慨然として、『妾を伴ひ給へ』と乞ふ。似たもの夫婦と、人や云ふらむ。裸男承知して、將に家を出でむとすれば、伊藤薊山、上京したるばかりの足にて、來り訪ふ。裸男の行裝を見て、『何處へ行く』と問ふ。夜行の事を告ぐれば、『相變らず元氣なる事かな。われも共に行かむ』といふ。『われを元氣といふ君こそ、相變らず元氣なれ』とて、相笑ふ。薊山今は太田中學校の教員なるが、裸男とは青年時代の舊學友にして、殊に遠足仲間也。幾んど日曜ごとに遠足したりき。いづれも貧乏書生の事とて、人並に汽車に乘る贅澤は出來ず。十四里の鎌倉へ、徹夜して行き、徹夜して歸りたることもありき。徹夜するのみならず、野宿したることもありき。或時、日は暮れかゝる、雨はふる、寒さ身を裂く、腹はペコ/\になる、薊山小便せむとするに兩手凍えて、自からズボンの釦を外すこと能はず、裸男代りて外してやりたることなどもありき。兩人とも當時盛んに遠足したればこそ、今日の元氣もあるなれと、裸男ひそかに鼻うごめかす。

義甥の鹽井健男、同西山巖夫、甥の政長、豚兒三人も加はり、總勢九十三人、午後九時を以て、千住大橋を發足す。

參謀本部測量五萬分の地圖に據りて見しに、大橋より粕壁町の入口まで七里十一町あり。例に因りて、裸男幹部となりて、一行に殿す。薊山もあり、畫家の岡本一平氏もあり、西村醉夢もあり。山神は之に加はらず、少し前の方を歩ける樣子なりき。

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