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TORENDIA

都会と田園

本文約7,600字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

空を唄う雲雀や時雨の中の暮らし、曲がり角での出会いといった日常の断片を描き出す。都会の喧騒や農村の哀切な情景、そして窮乏する二人の様子が綴られる。また、工場を去る若者を見送る娘の姿や、家を失い旅立つ作者の胸中など、季節の移ろいとともに市井の人々の悲哀や孤独が詩情豊かに表現される。これは、都会と田園の様々な生活の断片と、そこに生きる人々の情念を収めた作品集である。

野口雨情

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[#ページの左右中央]

序詩

空の上に、雲雀は唄を唄つてゐる

渦を巻いてゐる太陽の

光波にまかれて

唄つてゐる――

[#改ページ]

時雨唄

雨降りお月さん

暈下され

傘さしたい

死んだ母さん、後母さん

時雨の降るのに

下駄下され

跣足で米磨ぐ

死んだ母さん、後母さん

柄杓にざぶざぶ

水下され

釣瓶が[#「釣瓶が」は底本では「鈞瓶が」]重くてあがらない

死んだ母さん、後母さん

親孝行するから

足袋下され

足が凍えて歩けない

死んだ母さん、後母さん

奉公にゆきたい

味噌下され

咽喉に御飯が通らない

死んだ母さん、後母さん

曲り角

銀行員のFさんは

新しい背広を着て――大足に出ていつた

黒いソフト、光る靴

暖い日の

午前九時頃

曲り角でバツタリ

A子さんと行き逢つた

(オヤ! オヤ!)

すらりとした――

桃割れ、白い歯

Fさんの顔

A子さんの眼

(オヤ! オヤ!)

二人はすれ違ふ

胸の動悸

柿の木のエピソード

背戸の畑の柿が赤くなつて来ると毎日烏が集つて来て喰つてゐた

子供に番をさせて置いても

烏は毎日来た

親父は洗濯竿の先へ

鶏の羽根をぶら下げて

柿の木の傍へ

立てて置いた

鶏の羽根が

ふわふわ動いてゐる

烏は遠くから見てゐて

来なかつた

時折、別な烏が来ても

鶏の羽根が動くとすぐに飛んでゆく

親父も子供も

安心して喜んでゐた

一晩風が吹いた

朝の暗い内から柿の木で烏が鳴いてゐた

洗濯竿が畑の中に倒れてゐる

子供は駈けて来て親父に咄した

曼陀羅華

何処から種が飛んで来たのか

畑の中に

曼陀羅華が生えてゐる

百姓は

抜いて捨てようと思つてゐる中に

夏が来た

曼陀羅華は

葉と葉の間から

白い花を咲かうとしてゐる

百姓は

花なんか咲かせて置くもんかと

独言を云つてゐた

たうとう秋になつて了つた

曼陀羅華の花は

すつかり実になつてゐる

百姓は憤つて――手をかけると

皆んな実は畑の中へ

ぱらぱらはぢけて飛んだ

二人

歳の暮れも押し迫つて来てゐるのに

間借りしてゐる二人は

これからさき、どうすればいいのか

途方にくれてゐる

二人は

小さな火鉢を中にして

痛切に――お互に――暮しませうと云つてゐるが

矢張り涙にくれてゐる

二人は

昨夜も、同じやうな夢を見た

銀貨だの、米だの、肉だの、炭だの

凩は屋根を鳴らして吹いてゐる

家鴨

うしろの田の中に家鴨の子が

田螺を拾つて喰つてゐると

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