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TORENDIA

俳優への手紙

本文約32,000字 ・ 読了時間 約64分

あらすじ(AIが作成しました)

演劇雑誌に発表された丸山定夫の「答えと問い」に対し、著者が演劇の在り方と俳優の姿勢について綴る。本作は、芸術運動としての劇団経営における芸術的意図と現実的な経営的必要の相剋は避けられないものであり、互いを矯正し合う関係であるべきだと論じる。著者は、演劇人としての良心と生活は両立し一本になるべきだと強く主張し、日本の演劇文化の発展と、それが国家の勝利に繋がるという信念を、友である俳優に向けて切実に語る。

三好十郎

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丸山定夫君――

本誌〔演劇・昭18〕昨年十二月号に君の書いた「答えと問い」を読んだ。その中で君は、先頃から僕が君にあてて出した手紙に就て君の考えたことを述べている。

その真率な調子に、先ず[#「先ず」は底本では「先づ」]僕は頭を下げた。しかもそこに書かれている事は、昨日や今日、ヒョイと思い附かれた即興的な感情では無く、永い過去から現在に至るまでの良心的俳優としての君が経験して来た事実から生み出された考え方――言って見れば、君の身体に叩き込まれた所から出ている「音」である。それは殆んど運命的な径路と時日を要して君の裡に少しずつ少しずつ蓄積され形成されて来た思想の切断面である。

僕は君のために、よろこんだ。君が、君としては珍らしくムキになって来ていることが解り、ああ丸山もいよいよボヤボヤして居れなくなって来たと思い、わが友丸山定夫の素顔を近々と見る思いがして、君に対して僕が抱いて来た永い敬愛の念を新たにしたことである。

僕の気持はうれしいと言うよりも、むしろ、ありがたいと言うに近かった。君の意見自身の是非のことではない。君のムキな態度のことである。君にこの様なムキさが失われて居ず、そしてこの様なムキさを君が持ちつづけて行ってくれるならば、それは、やがては君自身をも、それから僕をも、それからその他の演劇人達をも、より高い、より確乎とした境地へ引き上げてくれる事が出来ると思ったのだ。

願わくば、このムキな態度を持ちつづけてくれ。逃避したり、はずしたり、詭弁に[#「詭弁に」は底本では「詭辨に」]陥ちたり、自嘲に堕したりしないでくれ。君は君の文章の中で「一つの劇団の活動は永続させることが何よりも大事だ」と言っているが、そしてそれは確かに真理であるがしかし今の場合、それよりも尚一層大事なことは君自身のこの様なムキな態度が永続してくれることだと僕は思う。

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