四つの市
本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
北方の四つの都市ファリアス、ゴリアス、フィニアス、ムリアスを巡るアイルランドの伝説やフィオナ・マクラオドの随筆を通じ、アダムとイヴの起源を描く。天上の住人との愛が失われた後の無人の市々をイヴが訪れ、炎や槍、星を採り入れて帰還する物語を綴る。持ち帰った海の波が後の世の女たちに受け継がれる血として塩辛い煩悶や流浪の宿命をもたらすという伝説を辿り、遠き古の記憶がいまの私たちと無縁であるかを問いかける随筆である。
💰 この本を応援する(投げ銭)
グレレゴリイ夫人の伝説によると、むかしゲエル人の先住民ダナ人らがアイルランドに渡つて来た時には、大ぞらの空気の中を通つて霧に乗つて来たさうである。ダナ人は北の方から来たと書いてあるが、その北の方に四つの都市があつた。まづ大きな市ファリアス、それから光りかがやくゴリアスとフィニアス、ずうつと南の方にムリアスがあつた。ダナ人はその四つの市から四つの宝を持つて来た。まづファリアスからはリア・フエールと名づけられた「運命の石」。ゴリアスからは一本の剣。フィニアスからは「勝利の槍」。ムリアスからは大きな鍋、その鍋があれば、いかほど大勢の人数にも充分たべさせ得られた。さう書いてあつても、そのふるさとの市は北の方にあるとだけしか分らない。
その四つの市についてフィオナ・マクラオドの随筆では、むかし、イデンの園の四方にゴリアス、ファリアス、フィニアス、ムリアスの市があつた。そのころイデンは天使らと地の娘たちとの子孫で繁昌してゐた。あの美と悲しみの女イヴがまだ生まれてはゐない時分で、霊をもたないリリスの娘らはみる目美しく花のやうであつたが、花のやうに枯れて死んでしまへば、それきりであつた。その時アダムはまだイデンの園から起き出してはゐなかつた。