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TORENDIA

「子猫ノハナシ」

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

明治末期の麹町に住む有名なお茶の先生、田辺和気子のもとに通う弟子の視点から描かれる回想録。前田家に仕えた経験を持ち、西洋文化にも理解を示す聡明な先生が、昏睡状態から目覚めた際、手帖に「子猫ノハナシ」という言葉を書き残すまでを描く。宮家へ稽古に通う多忙な日々や、質素だが風流な屋敷での暮らし、そして突然の病に倒れた先生を看病する周囲の人々の様子を通して、気高く生きた一人の明治女性の姿を綴る。

片山廣子

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🎧 「子猫ノハナシ」 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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明治の末頃、田辺和気子といふ有名なお茶の先生があつた。その田辺先生に私は二年ぐらゐお茶を教へていただいた。先生はお花も教へてをられ、金曜日には先生のあまり広くないお宅は花屋から持ちこむお花で、お座敷も椽側もいつぱいになつた。お流儀花の池の坊であつたが、ほんとうはお茶のついでに教へられたので、まづお嫁入り前のお稽古花のやうであつた。

先生のお家は麹町の屋敷町の中に置き忘れられたやうな古いちひさい家で、八畳二間と玄関の三畳、それに二畳の板の間がお座敷の西側にあつて水屋に使はれてゐた。お弟子の私たちはお玄関にゆかず、しをり戸からお庭にはいり、お庭の飛石を渡つてすぐ椽側に上がるのだつた。三十坪ぐらゐの狭いお庭は草がとても風流に繁つて、たけの長い草は抜かれるらしく、曲りくねつた小径には苔やつる草の中にちらちら飛石が見え、その先きの方に三四本の短かい木や灌木が植込みになつて、その先きの青い世界が約束されてゐた。

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