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TORENDIA

ろうそくと貝がら

本文約2,500字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

海辺で母親と暮らす娘は、二年前に漁へ出て行方不明となった父親の帰りを待ちわびている。嵐の夜、帰還を願って窓辺にろうそくの火を灯し続ける娘の前に、突然謎の男が現れる。男は父親からの言づてを届けに来たと語り、土産として袋を置いて去っていく。翌朝、袋の中身が貝がらであることを知った母親はそれを外へ捨ててしまうが、数日後、その場所には美しい黄色い花が咲き乱れ、娘はそれを見て日々の暮らしを営むようになる。

小川未明

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🎧 ろうそくと貝がら / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一

海の近くに一軒の家がありました。家には母親と娘とがさびしく暮らしていました。けれど二人は働いて、どうにかその日を暮らしてゆくことができました。

父親は二年前に、海へ漁に出かけたきり帰ってきませんでした。その当座、たいへんに海が荒れて、難船が多かったといいますから、きっと父親も、その中に入っているのだろうと悲しみ嘆きました。

けれど、また、遠いところへ風のために吹きつけられて、父親はまだ生き残っていて、いつか帰ってくるのではないかというような気もしまして、二人は、おりおり海の方をながめて、あてなき思いにふけっていました。

「お母さん、お父さんは死んでしまわれたんでしょうか。」と、娘は目に涙をためて、母親に問いますと、

「いまだにたよりがないところをみると、きっとそうかもしれない。」と、母親も、さびしそうな顔つきをして答えました。

「ほんとうに、お父さんが生きていて帰ってきてくだされたら、どんなにうれしいかしれない。」と、娘はいいました。

「生きていなされば、きっと帰ってきなさるから、そう心配せずに待っていたほうがいい。」と、母親は娘をなぐさめました。

娘は昼間仕事に出て、日が暮れかかると家に帰ってきました。窓を開けると、かなたに青い海が見えました。静かに、海のかなたが、赤く夕焼けがして暮れてゆくときもあります。また、灰色に曇ったまま暮れてゆくときもあります。またあるときは、風が吹いて、海の上があわだって見えるときもありました。

月のいい晩には、往来する船も、なんとなく安全に思われますが、海が怒って、真っ暗な、波音のすさまじいときには、どんなに航海をする船は難儀をしたかしれません。

そんなとき、娘はきっと父親のことを思い出すのでありました。もし父親が、こんな嵐の強い晩に、海をこいで帰ってこられたなら、方角もわからないので、どんなにか難儀をなされるだろうと、こう考えると、娘はもはや、じっとしていることができませんでした。立ち上がって、窓からいっしんに沖の方を見つめていました。

二

父親の行方がわからなくなってから、二人は、毎晩仏壇に燈火をあげて拝みました。

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