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TORENDIA

海のまぼろし

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

浜辺で口笛を吹く若者と、彼に密かに思いを寄せる内気な娘、そして快活な友人の娘の物語。若者は遠い船出を前に結婚を誓うが、帰らぬ人となる。友人の娘は指輪を海に捨てて他の青年と恋に落ちる一方、内気の娘はひたすら若者の帰りを待ち続けていた。ある冬の日、兄が海で奇妙な難破船を目撃する。その晩、妹が調理しようとした魚の腹から、かつて若者に託したはずの、亡き母の形見の指輪が発見される様子を描く。

小川未明

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🎧 海のまぼろし / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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浜辺に立って、沖の方を見ながら、いつも口笛を吹いている若者がありました。風は、その音を消し、青い、青い、ガラスのような空には、白いかもめが飛んでいました。

ここに、また二人の娘があって、一人の娘は、内気で思ったことも、口に出していわず、悲しいときも、目にいっぱい涙をためて、うつむいているというふうでありましたから、心で慕っていた若者のいうことは、なんでもきいたのであります。

「その指にはめている、指輪をくれない?」と、あるとき、若者がいいました。

彼女は、ほんとうに、若者が、自分を愛しているので、そういったのだろうと思って、指にはめている指輪をぬいてやりました。それは、死んだお母さんからもらった、だいじにしていたものです。

その後のこと、あるうららかな日でした。

「こんど、遠い船出をして、帰ってきたら、結婚をしようと思っているが、だれか、約束をしてくれる女はないだろうか。」と、若者がいいました。彼女は、もとより驚きました。そして、恥ずかしさのために、ほおを赤くして、うつむいていたのであります。

彼女にくらべて、友だちの娘は、平常、はすっぱといわれるほどの、快活の性質でありましたから、これをきくと、すぐに、

「私が、お約束をいたします。勇ましい、遠い船出から、あなたのお帰りなさる日を、氏神にご無事を祈って、お待ちしています。」といいました。

こう女にいわれて、喜ばぬ男はなかったでありましょう。若者は、大いにはしゃいで、このあいだもらって、秘蔵していた指輪を、その娘に与え、指にはめてやりました。そばでこれを見たときは、いかに、おとなしい娘でも、さすがにそこにいたたまらず、胸を裂かれるような気持ちがしたのです。

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