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TORENDIA

空晴れて

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

山間の寂しい村で小学校の小使いとして働く少年小田賢一は、恩師の助言に従い東京へ出て働くことを決意する。薪炭商に住み込み、持ち前の誠実さで懸命に励む賢一は、都会の生活に馴染みながらも故郷へ思いを馳せる。ある日、往来で老人をかばおうとして自動車にはねられ負傷するが、主人の温かい支援と自身の誠意により、逆境の中でも人間として成長していく姿を描く。

小川未明

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🎧 空晴れて / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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山間の寂しい村には、秋が早くきました。一時、木々の葉が紅葉して、さながら火の燃えついたように美しかったのもつかの間であって、身をきるようなあらしのたびに、山はやせ、やがて、その後にやってくる、長い沈黙の冬に移らんとしていたのです。そこにあった、みすぼらしい小学校へは、遠く隣村から通ってくる年老った先生がありました。日の長い夏のころは、さほどでもなかったが、じきに暮れかかるこのごろでは、帰りに峠を一つ越すと、もう暗くなってしまうのでした。

「先生、天気が変わりそうです。早くお帰りなさらないといけません。」

少年小使いの小田賢一は、いったのでした。子供たちは、すべて去ってしまって、学校の中は、空き家にも等しかったのです。教員室には、老先生が、ただ一人残って、机の上をかたづけていられました。

「小田くん、すこし、漢文を見てあげよう。用がすんだら、ここにきたまえ。」と、老先生は、いわれた。

「先生、しかし、あらしになりそうです。また暗くなって、お帰りにお困りですから。」と、小田は、遠慮したのでした。

彼は、この小学校を卒業したのだけれど、家が貧しくて、その上の学校へは、もとより上がることができなく、小使いに雇われたのでした。そして、夜は、この学校に泊まって、留守番をしていました。雪がたくさんに積もると、老先生も、冬の間だけ、学校に寄宿されることもありました。

先生は、小田が忠実であって、信用のおける人物であることは、とうから見ていられたので、彼に、学問をさしたら、ますます善い人間になると思われたから、このごろ、暇のあるときは、わざわざ残って「孝経」を教えていられたのです。

ぱらぱらといって、落ち葉が、風に飛ばされてきて、窓のガラス戸に当たる音がしていました。

「子曰夫孝天之経也。地之義也。民之行也。――この経は、サダマリというのだ。そして、義は、ここでは道理という意味であって、民は即ち人、行はこれをツトメというのだ。」と、老先生は、教えていられました。賢一は、頭を垂れて、書物の上を見つめて、先生のおっしゃることを、よく心に銘じてきいていました。

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