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TORENDIA

犬と人と花

本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

町はずれの静かな寺で和尚と暮らす年老いた赤犬は、お経を聞く日課を欠かさない。ある日、和尚は犬に人間へ生まれ変わる未来を語る。やがて年月が流れ、村には皆から慕われる徳の高い老人が現れる。村人はこぞって老人に食べ物を分け与え、その穏やかな笑顔に心を和ませる。老人と犬の数奇な縁と、桜が舞う平和な村の風景を通じて、命の巡り合わせと人々の温かな絆を描く。

小川未明

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🎧 犬と人と花 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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ある町はずれのさびしい寺に、和尚さまと一ぴきの大きな赤犬とが住んでいました。そのほかには、だれもいなかったのであります。

和尚さまは、毎日御堂にいってお経を上げられていました。昼も、夜も、あたりは火の消えたように寂然として静かでありました。犬もだいぶ年をとっていました。おとなしい、聞き分けのある犬で、和尚さまのいうことはなんでもわかりました。ただ、ものがいえないばかりでありました。

赤犬は、毎日、御堂の上がり口におとなしく腹ばいになって、和尚さまのあげるお経を熱心に聞いていたのであります。和尚さまは、どんな日でもお勤めを怠られたことはありません。赤犬も、お経のあげられる時分には、ちゃんときて、いつものごとく瞼を細くして、お経の声を聞いていました。

お寺の境内には、幾たびか春がきたり、また去りました。けれど、和尚さまと犬の生活には変わりがなかったのであります。

和尚さまは、ある日赤犬に向かって、

「おまえも年をとった。やがて極楽へゆくであろうが、私はいつも仏さまに向かって、今度の世には、おまえが徳のある人間に生ま変わってくるようにとお願い申している。よく心で、仏さまに、おまえもお願い申しておれよ。おそらく、三十年の後には、おまえは、またこの娑婆に出てくるだろう。」といわれました。

赤犬は、和尚さまの話を聞いて、さもよくわかるようにうなだれて、二つの目から涙をこぼしていました。

数年の後に、和尚さまも犬も、ついにこの世を去ってしまいました。

三十年たち、五十年たち、七十年とたちました。この世の中もだいぶ変わりました。

ある村に一人のおじいさんがありました。目の下に小さな黒子があって、まるまるとよくふとっていました。歩くときは、ちょうど豚の歩くようによちよちと歩きました。

おじいさんは、かつて怒ったことがなく、いつもにこにこと笑って、太い煙管で煙草を喫っていました。そのうえ、おじいさんは、体がふとっていて働けないせいもあるが、怠け者でなんにもしなかったけれど、けっして食うに困るようなことはありませんでした。

「おじいさん、今年は豆がよくできたから持ってきました。どうか食べてください。」

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