魚と白鳥
本文約3,900字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
冬の冷たい河の底で春を待つ魚の子供は、未知の世界に憧れながら成長していく。母魚は外の世界に潜む人間の釣りや白鳥などの危険を諭すが、子供は好奇心から一人で水面へ飛び出し、白鳥に捕らえられる窮地に陥る。しかし、母の教えを思い出し、命懸けの跳躍で逃げ延びることに成功する。この経験を経て、魚は慎重さと知恵を身につけ、成長した後も母魚や白鳥と共にそれぞれの世界で生きる姿を描く。
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河の中に、魚が、冬の間じっとしていました。水が、冷たく、そして、流れが急であったからであります。水の底は、暗く、陰気でありました。
魚の子供は、長い間、こうして、じっとしていることに退屈をしてしまいました。早く、水の中を自由に泳ぎたいものだと、体をもじもじさしていました。
けれど、母親は、よくいい諭したのであります。
「もうすこし辛棒しておいで、じきに春になる。そうすれば、水の上が明るくなって、水もあたたまりますよ。そうなったら、自由に泳ぐことを許してあげよう。」
子供は、お母さんに、こういわれると、おとなしくしていなければなりませんでした。しかし、それは、元気のいい子供には、なかなか退屈なことでありました。
ある日のこと、子供は、急に、頭の上が、赤く、ちらちらするのを見ました。子供は、喜んで躍りあがりました。
「なんという、赤い、明るい光だろう。春になったのだ!」と叫びました。子供は、すぐにも、その赤い光を慕っていこうとしました。
すると、母親は、あわててそれを止めました。
「おまえ、あれは、月の光でも、太陽の光でもないのだよ。あれを見て、いこうものなら、たいへんなことだ。もう、おまえは、二度と私のところへは帰ってこられない。あの赤いのは、人間が、火をたいているのだよ。そして、私たちをだまして、水の上へ呼び寄せようとしているのです。もし、いってごらん。人間が、大きな網で、みんなすくってしまうから……。」と、いいきかせました。
子供は、なんという怖ろしいことだろうと思いました。じっと、水の底に沈んで、暗い上の方で、一ところだけが、赤く、電のように、ちらちらと火花を散らしているのを、怖ろしげにながめていました。
「お母さん、春になると、どうなるのですか?」
と、子供は、いいました。
子供は、去年の春、生まれたので、まだ、今年の春にはあわないのであります。すると、母親はいいました。
「春になると、水の上が、一面に明るくなるよ。けっして、あのように、一ところだけが、赤く、明るくなるというようなことがありません。」と、よく教えました。