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TORENDIA

みじめな夜

本文約450字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

夜更けに遠く離れた友人たちを思い浮かべ、葉書も出さない自分への苛立ちから、他人を対照にして自らを不快に思う心の揺れを綴る牧野信一の随筆。

牧野信一

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🎧 みじめな夜 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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ふと、思つた――。

秋田の聯隊にゐる柏は今何をしてゐるだらうか、京都に行つてゐる松村は? 下総の取手に行つてゐる宮広は?

時計を見たら三時半(夜)だつた。

「グツスリと眠つてゐるだらう。」と思つた。と、眠つてゐるだらう、と思つたことが悪いやうな気がした。

取手へ行かう行かう、是非行つて見たい、などと上調子のやうな口調で自ら喋つておきながら……(下村が行つてゐるときもさうだつた、下村は取手を引上げて来て、もう幾月になるだらう、その間に彼は病気した、その時も自分は訪れ損つた。手紙を書いたのを破いて電車道まで出掛けて、また室へ引き返した。)……葉書も出さない。兵営の柏にも定めし冷い日(それは自分勝手の想像だが)を送つてゐるだらう柏にも……センチメタルになつた。……初め、他人を対照にして自らを不快に思つてゐるうちに間もなく他人の幻は悉く消えて自らだけが不快になつた。……「――」

その次に「それほどでもないな。」と思つた。

火鉢の灰に気味の悪い程、巻煙草の口が上を向いてゐた。……。

自分は「歌」のことを考へてゐた。

完

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