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TORENDIA

森の妖姫

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

信濃の山中にある琵琶池には、かつて追手により夫を失い、悲嘆の末に身を投げた女が妖霊となって住まうという伝説がある。盛夏、この地を訪れた青年画家は、写生中に美しい歌声と共に現れる謎の女の姿を目にする。次第にその存在に心惹かれ、画中に彼女を収めようと試みる青年であったが、ある時、森の中から聞こえる歌声と激しい嵐と共に、彼の姿もまた忽然と消え失せてしまう。

小川未明

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🎧 森の妖姫 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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何の時代からであるか、信濃の国の或る山中に、一つの湖水がある。名を琵琶池といって神代ながらの青々とした水は声なく静かに神秘の色をたたえて、木影は水面の暗きまでに繁りに繁り合うている。人も稀にしか行かない処で、春、夏、秋、冬、鳥の啼声と、白雲の悠々と流れ行く姿を見るばかり。

偶々道に迷うて、旅人のこの辺まで踏み込んで、この物怖しの池の畔に来て見ると、こは不思議なことに年若い女が悄然と佇んで、自分の姿をその白銀のような水面に映してさめざめと泣いているのを見る。旅人は斯様な山中にどうして斯様女がいるかと怪しみながら傍へ行こうとすると蔦葛や、茨に衣のからまって、容易に行くことが出来ず、声を上げて女を呼ぶとその声音が不思議に妙な反響を木精にたてて、静かな死せるような水面がゆらゆらと揺ぐ。ぞっとして踵を返して、一生懸命に野を横ぎり、又もや村里の方を指して程少し来ると思う時分に百万の軍勢が鬨を造って、枯野を駆けるがように轟と風やら、雨の物音が耳許を襲う。この時には麓の村々には大雷雨があって、物を知れる年寄などは又誰れか池で身投をして死んだな、と噂をするのである。而してその旅人は何処へ行ったやら再び姿を見ぬ。

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