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TORENDIA

神童

本文約9,200字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

ビビイ・ザッケラフィラッカスと名乗る八歳の少年が、音楽の才能を披露するため豪華なホテルの広間で演奏会を開く。白絹の衣装に身を包んだ神童は、聴衆の喝采を浴びながら、自ら作曲した独創的な楽曲をピアノで奏でる。会場には上流階級や貴族が集まり、彼の一挙手一投足に注目する。演奏が終わると、少年は貴賓の呼びかけに応じつつ、内面では大人たちを見下すような冷めた感情を抱きながら、現実と孤独の狭間で音楽と向き合い続ける。

トオマス・マン Thomas Mann

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神童が入って来る――会場はしんとしずまる。しずまったと思うと、やがて人々は手を叩きはじめる。どこかわきのほうの席で、ある生れながらの支配者、統率者である人が、まずはじめに拍手したからである。人々はまだなんにもきかぬうちから、喝采を浴びせている。それは大仕掛な宣伝機関が、この神童の先に廻って活躍したので、知るも知らぬも、みんなすでに眩惑せられているのである。

神童は、一面にアンピイル式の花環と、大きな仙花とで刺繍せられた、華麗な衝立のかげから現われて、すばしこく段々を昇って、演奏壇へあがると、風呂にでも入るように、拍手喝采の中へ入って行く。少しさむけを覚えて、かすかな身ぶるいにおそわれながら、しかしそれでいて、ある快い雰囲気の中へ入って行くような気持なのである。演奏壇の端まで進んで、写真でもとられる時のように微笑する。そして男の児のくせに、女のするような、小さいおずおずしたかわいらしいお辞儀で感謝する。

着物はすっかり白絹ずくめである。それが満場にある種の感動をみなぎらせる。奇抜な仕立の小さい白絹の上着の下に、飾り帯をしめている。靴までが白絹製である。ただし白絹の半ズボンは、濃い鳶色のあらわな脚と、くっきり映り合っている。神童はギリシアの少年なのである。

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