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TORENDIA

鉄道事故

本文約10,300字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

ドレスデンへの講演旅行に向かう道中、語り手は夜の寝台列車で脱線事故に遭遇する。尊大な態度で周囲を見下していた紳士や、ミュンヘンで見かけた老婦人らと共に、混乱する車内から脱出した乗客たちは秩序を失った空間を共有する。事故後に臨時列車へ乗り込んだ語り手は、身分や階級を問わず一つの車両に詰め込まれた乗客たちの姿を目の当たりにしながら、ようやく目的地のドレスデンへと到着するまでの体験を描く。

トオマス・マン Thomas Mann

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なにか話せ? しかしなんにも知らないのだがね。まあいいや。じゃなにか話すとしよう。

もう二年になるが、一度僕は汽車の事故に出くわしたことがあるのだ――一々のこまかいことまで、みんなありありと眼に残っているよ。

そりゃ決して最大級のやつじゃなかった。「弁別しがたき無数の死者」とかなんとかいうような、大げさなやつじゃなかった。そんなのとは違う。でもやっぱり、あらゆる附録の備わった、正真正銘の鉄道事故でね、しかもおまけに夜あったんだ。こんな目にあった人はそうざらにはあるまい。だから、それをひとつお聞かせしよう。

僕はその時、ドレスデンへむかう途中だった。文学奨励者たちに招待せられてね。つまり芸術行脚、名匠行脚という、僕が今でも時々出かけるのにやぶさかでないやつさ。代表者になる。演壇に昇る。喝采する群衆に姿を示す。ヴィルヘルム二世の臣たるに恥じずというわけだ。それにまたドレスデンは全くいいところだからな(ことにあの牙城はね)。そして僕は用がすんだら、十日か二週間ぐらい、いささか英気を養うために、「ワイセル・ヒルシュ」へ行って、摂生の結果、霊感でも得られたら、また仕事もしてみるつもりだった。という次第で、鞄の一番底には、原稿を入れておいた。備忘録と一緒にしてね。茶色の包み紙でくるんだ上を、バイエルンの国色の太い紐でしばった、どうどうたるひと包みさ。

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