TRENDIA CLASSIC

神の剣

トオマス・マン Thomas Mann

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ミュンヘンは輝いていた。この首都の晴れがましい広場や白い柱堂、昔ごのみの記念碑やバロック風の寺院、ほとばしる噴水や宮殿や遊園などの上には、青絹の空が照り渡りながらひろがっているし、そのひろやかな、明るい、緑で囲まれた、よく整った遠景は、美しい六月はじめのひるもやの中に横たわっている。

小路という小路には、鳥のさえずりとひそかな歓呼が聞える。――そしてほうぼうの広場や大通りには、この美しい穏かな都の、急がぬ楽しげないとなみが、ゆれ動き、波打ち、かすかなうなりを立てている。あらゆる国々の旅客たちは、見境のない好奇の眼で、左右の家々の壁を見上げながら、小さいのろい辻馬車を乗りまわしたり、美術館の入口の階段を昇ったりしている。

ほうぼうの窓が開け放たれていて、中から音楽が往来へもれひびいてくる。ピアノ、ヴァイオリン、またはセロなどの練習――誠実な善意な素人的な努力である。「オデオン」ではしかし、数台のグランド・ピアノを真剣に勉強しているのが聞える。

ノオトゥングの楽旨を口笛に吹いたり、夜になると、近代的な劇場のうしろの座席をみたしたりする若い人たちは、上着の横がくしに文学雑誌を入れたまま、大学や国立図書館を出つ入りつしている。トルコ街と凱旋門との間に、白い両腕をひろげた美術学校の前には、宮廷馬車が一台とまっている。そして表階段の一番上には、色あざやかな幾群をなして、モデルたちが――絵のような老人や子供や女たちが、アルバニア山地の服装で、立ったり腰かけたりしゃがんだりしている。

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