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TORENDIA

にはかへんろ記

本文約12,000字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

阿波の霊山寺で遍路装束を調えた筆者は、同行の池田吉之助と共に四国各地の霊場を巡る旅に出る。汽船の広告で仏具店を知り、道中で徳島ゆかりの人物や歴史的な話に触れながら、霊場特有の静寂や風景の中に身を置く。札所を巡る中での池田との交流や、山中の寺院での住職との対話、さらに五台山の竹林寺を訪れる様子などを綴り、七日間の遍路の旅を終えて京都の宿へたどり着くまでの道程と心象を描く。

久保田万太郎

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まづ船に旅の幸えし五月かな

一

杖            五〇円

笠           三三〇円

べんたう行李       五五円

荷物行李(おひずる)  三〇〇円

首掛袋          八〇円

鈴           二五〇円

数珠          二五〇円

札箱           五〇円

お札           二〇円

納経帖         一〇〇円

脚絆          一五〇円

白衣          四五〇円

以上のへんろ装束、並びに、持道具一切を、われ/\、四国第一番の札所は、阿波、霊山寺門前の浅野仏具店で調へることができた。

その前日の午後、神戸から乗つた“あきつ丸”を小松島で下りた途端、その汽船発着所の待合室にたま/\みいだした広告……それによつて、われ/\、その浅野仏具店といふ、おもひもよらぬ器用なものゝあるのを知つた。……といふことは、そこへ行きさへすれば、へんろ装束一切が、右からひだり、簡単に、すぐにでも間に合ふであらうといふことが、われ/\に、おのづから了解できたのである。

すなはち、

――大丈夫だよ、君。……何も心配するがものはなかつた……

と、ぼくは、同行、池田吉之助君をかへりみた。

――さうなんですなァ。……安心しました、これで……

と、東京出発以来、いかにして調達すべきかと、それをばかり苦にしつゞけた池田君は、太だ、正直に、惜みなく、口もとをほころばした。

が、そのあと、その広告のちかくに掲げられた告知……小松島保安部、小松島巡査派出所、及び、関西汽船株式会社名による乗客への注意書は、もッと、太だ、われ/\をよろこばした。

なぜか?

“――船内でのインチキ賭博には手を出さないで下さい。絶対に勝てないばかりか、刑事上の罪になります……”

といふ一トくだりの文句をその中にみつけたからである。

“――絶対に勝てないばかりか……”

なか/\、素直に、かうはいへるもんぢやァない……

――よきかな、四国……

ぼくは、ひそかに、ぼくにいつた。

二

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