中国という国では、みなさんもごぞんじのことと思いますが、皇帝は中国人です。それから、おそばにつかえている人たちも、みんな中国人です。さて、これからするお話は、もう今からずっとむかしにあったことですけれど、それだけに、かえって今お話しておくほうがいいと思うのです。なぜって、そうでもしておかなければ、忘れられてしまいますからね。
皇帝の住んでいる御殿は、世界でいちばんりっぱな御殿でした。なにもかもが、りっぱな瀬戸物で作られていました。それには、ずいぶんお金がかかっていました。ただ、とってもこわれやすいので、うっかり、さわりでもすれば、たいへんです。ですから、みんなは、よく気をつけなければなりません。
お庭には、世にもめずらしい花が咲きみだれていました。なかでも、いちばん美しい花には、銀の鈴がゆわえつけてありました。その鈴は、たいそうよい音をたてて、リンリンと鳴りましたので、そのそばを通るときには、だれでも、つい、花のほうに気をとられるほどでした。
ほんとうに、皇帝のお庭にあるものは、なにもかもが、さまざまの工夫をこらしてありました。おまけに、そのお庭の広いことといったら、おどろいてしまいます。お庭の手入れをする植木屋でさえも、いったい、どこがお庭のおわりなのか、見当もつかないくらいだったのです。そのお庭をどんどん歩いて行くと、このうえもなく美しい森に出ました。そこには、高い木々がしげっていて、深い湖がいくつもありました。森は、青々とした深い湖の岸までつづいていて、木々の枝は水の上までひろがっていました。大きな船でも、帆をはったまま、その下を通ることができました。
さて、その枝に、一羽のナイチンゲールが住んでいました。その歌声は、ほんとうにすばらしいものでした。ですから、仕事にいそがしい、貧しい漁師でさえも、夜、網をうちにでて、ナイチンゲールの歌声を耳にすると、思わず仕事の手をやすめてはじっと聞きいったものでした。