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TORENDIA

いいなずけ

本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

同じ引出しに住むこまとまりは、互いに身分の違いや価値観から距離を置いていた。高く跳ねるまりに心を奪われたこまは、何度か思いを伝えるが、まりにはツバメという別の思い人がいた。やがて姿を消したまりを想いながら、こまは長い月日を過ごす。ある日、ごみ箱の中でふくれあがったまりと再会するが、こまは言葉を失う。再会を機に元の生活へ戻ったこまは、かつての恋について二度と語ることはなかった。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen

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🎧 いいなずけ / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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こまとまりが、ほかのおもちゃのあいだにまじって、同じ引出しの中にはいっていました。あるとき、こまが、まりにむかって言いました。

「ねえ、おんなじ引出しの中にいるんだから、ぼくのいいなずけになってくれない?」

けれども、まりは、モロッコがわの着物を着ていて、自分では、じょうひんなお嬢さんのつもりでいましたから、そんな申し出には返事もしませんでした。

そのつぎの日、おもちゃの持ち主の小さな男の子がきました。男の子は、こまに赤い色や、黄色い色をぬりつけて、そのまんなかに、しんちゅうのくぎを一本、うちこみました。こまが、ブンブンまわりだすと、ほんとうにきれいに見えました。

「ぼくを見てよ」と、こまは、まりに言いました。「ねえ、今度は、どう? いいなずけにならない? ぼくたち、とても似合ってるもの。きみがはねて、ぼくが踊る。きっと、ぼくたちふたりは、だれよりもしあわせになれるよ」

「まあ、そうかしら」と、まりが言いました。「でも、よくって。あたしのおとうさんとおかあさんは、モロッコがわのスリッパだったのよ。それに、あたしのからだの中には、コルクがはいっているのよ」

「そんなこといや、ぼくだって、マホガニーの木でできているんだよ」と、こまが言いました。「それも、市長さんが、ろくろ台を持っているもんだから、自分で、ぼくを作ってくれたんだよ。とっても、ごきげんでね」

「そうお。でも、ほんと?」と、まりが言いました。

「もし、これがうそだったら、ぼく、もう、ひもで打ってもらえなくったって、しかたがないよ」と、こまは答えました。

「あなた、ずいぶんお口がうまいのね」と、まりは言いました。「でも、だめだわ。あたし、ツバメさんと、はんぶん、婚約したのもおんなじなのよ。だって、あたしが高くはねあがると、そのたびに、ツバメさんたら、巣の中から頭を出して、『どうなの? どうなの?』ってきくんですもの。それで、あたし、心の中で、『ええ、いいわ』って言ってしまったの。だから、はんぶん婚約したようなものでしょ。でも、あなたのことは、けっして忘れないわ。あたし、お約束してよ」

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