1 / 4

こまとまりが、ほかのおもちゃのあいだにまじって、同じ引出しの中にはいっていました。あるとき、こまが、まりにむかって言いました。

「ねえ、おんなじ引出しの中にいるんだから、ぼくのいいなずけになってくれない?」

けれども、まりは、モロッコがわの着物を着ていて、自分では、じょうひんなお嬢さんのつもりでいましたから、そんな申し出には返事もしませんでした。

そのつぎの日、おもちゃの持ち主の小さな男の子がきました。男の子は、こまに赤い色や、黄色い色をぬりつけて、そのまんなかに、しんちゅうのくぎを一本、うちこみました。こまが、ブンブンまわりだすと、ほんとうにきれいに見えました。

「ぼくを見てよ」と、こまは、まりに言いました。「ねえ、今度は、どう? いいなずけにならない? ぼくたち、とても似合ってるもの。きみがはねて、ぼくが踊る。きっと、ぼくたちふたりは、だれよりもしあわせになれるよ」

「まあ、そうかしら」と、まりが言いました。「でも、よくって。あたしのおとうさんとおかあさんは、モロッコがわのスリッパだったのよ。それに、あたしのからだの中には、コルクがはいっているのよ」

「そんなこといや、ぼくだって、マホガニーの木でできているんだよ」と、こまが言いました。「それも、市長さんが、ろくろ台を持っているもんだから、自分で、ぼくを作ってくれたんだよ。とっても、ごきげんでね」

「そうお。でも、ほんと?」と、まりが言いました。

「もし、これがうそだったら、ぼく、もう、ひもで打ってもらえなくったって、しかたがないよ」と、こまは答えました。

「あなた、ずいぶんお口がうまいのね」と、まりは言いました。「でも、だめだわ。あたし、ツバメさんと、はんぶん、婚約したのもおんなじなのよ。だって、あたしが高くはねあがると、そのたびに、ツバメさんたら、巣の中から頭を出して、『どうなの? どうなの?』ってきくんですもの。それで、あたし、心の中で、『ええ、いいわ』って言ってしまったの。だから、はんぶん婚約したようなものでしょ。でも、あなたのことは、けっして忘れないわ。あたし、お約束してよ」

ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersenの他の作品

アンネ・リスベット
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
家じゅうの人たちの言ったこと
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
いたずらっ子
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
アヒルの庭で
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
かけっこ
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
イーダちゃんのお花
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
絵のない絵本
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
コウノトリ
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
お墓の中の坊や
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
カラー
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
幸福な一家
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
すずの兵隊さん
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen