アンネ・リスベット
本文約15,600字 ・ 読了時間 約32分
あらすじ(AIが作成しました)
伯爵邸で乳母として働くアンネ・リスベットは、自身の息子を人夫の家へ預け、疎遠な関係を築いていた。不遇な環境で育った息子は船頭の下働きとなり、嵐の海で遭難する。その後、息子の亡霊に悩まされるようになった母親は、心の安らぎを求めて海辺や教会を彷徨い歩く。自らの心と向き合い、亡き息子との精神的な対話を通じて過去の罪と向き合い、魂の救済を求めて信仰心に目覚めていくまでの心情の変化を描く物語である。
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アンネ・リスベットは、まるで、ミルクと血のようです。若くて、元気で、美しい娘です。歯はまっ白に、ピカピカ光り、目はすみきっています。足は、ダンスをしているように、軽々としています。気持は、それよりももっと軽くて、陽気です。
で、このアンネ・リスベットは、どうなったでしょうか。赤ん坊の、おかあさんになりました。「みにくい赤ん坊」のおかあさんに。――そうです。赤ん坊は、きれいな子ではありませんでした。その子は、生れるとすぐ、みぞほり人夫の、おかみさんのところに、あずけられてしまいました。
おかあさんのアンネ・リスベットは、伯爵さまのお屋敷に、働きに行きました。アンネ・リスベットは、絹とビロードの着物を着て、りっぱな部屋の中に、すわっていました。アンネ・リスベットのところには、すきま風一つ、吹きこんではきませんでした。だれも、アンネ・リスベットに、らんぼうな言葉をかけてはなりませんでした。そんなことをすれば、アンネ・リスベットのからだに、さわるかもしれませんから。なにしろ、アンネ・リスベットは、伯爵さまの、赤ちゃんの、うばなのですから。
赤ちゃんは、王子のようにじょうひんで、天使のようにきれいでした。アンネ・リスベットは、この赤ちゃんを、心から、かわいがりました。ところが、自分の赤ん坊は、みぞほり人夫の家にいました。この家では、おなべがにたって、ふきこぼれるようなことは、ありませんでした。けれども、赤ん坊の口だけは、しょっちゅうあわをふきこぼしていました。
この家には、たいていのとき、だれもいませんでした。赤ん坊が泣きわめいても、それを聞きつけて、あやしてやろうとする者がいないのです。赤ん坊のほうは、泣いているうちに、いつのまにか、寝いってしまいます。眠ってさえいれば、そのあいだは、おなかがへっていることも、のどがかわいていることも、感じないものです。ほんとうに、眠りというものは、すばらしい発明ですよ。