1 / 10

ポルトガルから、一羽のアヒルがやってきました。もっとも、スペインからきたんだ、という人もありましたがね。でも、そんなことは、どっちでもいいのです。ともかく、そのアヒルは、ポルトガル種と呼ばれました。卵を生みましたが、やがて殺されて、料理されました。これが、そのアヒルの一生でした。

その卵から生れてきたものは、みんな、ポルトガル種と呼ばれました。ポルトガル種と言われるだけで、もうかなり重要なことなのです。

さて、この一家の中で、今このアヒルの庭にのこっているのは、たった一羽きりでした。ここは、アヒルの庭とはいっても、ニワトリたちもはいってきますし、オンドリなどは、いばりくさって歩きまわっていました。

「あのけたたましい鳴き声を聞くと、気分がわるくなってしまうわ」と、ポルトガル種の奥さんは言いました。「でも、見たところはきれいね。それは、うそとはいえないわ。アヒルじゃないけどもさ。もうすこし、自分をおさえりゃいいのに。だけど、自分をおさえるってことは、むずかしいことだから、高い教養がなくちゃできないわ。

でも、おとなりの庭の、ボダイジュにとまっている、歌うたいの小鳥さんたちには、それがあるわ。あのかわいらしい歌いかたといったら! あの歌の中には、なにかしら、しみじみとした調子があるわ。あれこそ、ポルトガル調よ! ああいう歌をうたう小鳥が、一羽でも、わたしの子供になってくれたら、わたしはやさしい、親切なおかあさんになってやるわ。だって、そういう性質は、わたしの血の中に、このポルトガル種の血の中にあるんですもの」

こんなふうに、ポルトガル奥さんが、おしゃべりをしていると、その歌をうたう小鳥が落ちてきました。小鳥は、屋根の上から、まっさかさまに落ちてきました。ネコに、うしろからおそわれたのです。でも、羽を一枚折られただけで、逃げだすことができたのです。そうして、このアヒルの庭の中へ、落ちてきたのでした。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersenの他の作品

アンネ・リスベット
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
いいなずけ
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
家じゅうの人たちの言ったこと
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
いたずらっ子
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
かけっこ
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
イーダちゃんのお花
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
絵のない絵本
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
コウノトリ
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
お墓の中の坊や
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
カラー
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
幸福な一家
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
すずの兵隊さん
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen