年とったカシワの木のさいごの夢
本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
三百六十五年を生きる森の長老であるカシワの木は、冬の眠りにつく間、長い年月で経験した過去の出来事を夢に見る。四季の移ろいや人々の営みを振り返り、神の天国のような幸福感に包まれる中で、木は自身の命の源である根を大地から離し、空へと昇っていく夢を見る。折しもクリスマスの夜の嵐により、木は現実に倒れるが、海上の船乗りたちは木を追悼する讃美歌を歌い、その生涯に思いを寄せる。
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(クリスマスのお話)
ひろいひろい海にむかった、きゅうな海岸の上に、森があります。その森の中に、それはそれは年とった、一本のカシワの木が立っていました。年は、ちょうど、三百六十五になります。でも、こんなに長い年月も、この木にとっては、わたしたち人間の、三百六十五日ぐらいにしかあたりません。
わたしたちは、昼のあいだは起きていて、夜になると眠ります。眠っているときに、夢を見ます。ところが、木は、ちがいます。木は、一年のうち、春と夏と秋のあいだは起きていて、冬になってはじめて、眠るのです。冬が、木の眠るときなのです。ですから、冬は、春・夏・秋という、長い長い昼のあとにくる、夜みたいなものです。
夏の暑い日には、よく、カゲロウが、この木のこずえのまわりを、とびまわります。カゲロウは、いかにも楽しそうに、ふわふわダンスを踊ります。それから、この小さな生きものは、カシワの木の大きな、みずみずしい葉の上にとまって、ちょっと休みます。そういうときには、心から幸福を感じています。
すると、カシワの木は、いつも、こう言いました。
「かわいそうなおちびさん。たった一日が、おまえにとっての一生とはねえ。なんとみじかい命だろう! まったくもって、悲しいことだなあ!」
「悲しいことですって?」と、そのたびに、カゲロウは言いました。「それは、どういうことなの? なにもかもが、こんなに、たとえようもないほど明るくて、暖かくて、美しいじゃありませんか。あたしは、とってもしあわせなのよ!」
「だが、たった一日だけ。それで、なにもかもが、おしまいじゃないか」
「おしまい?」と、カゲロウは言いました。「なにがおしまいなの? あなたも、おしまいになる?」
「いいや。わしは、おそらく、おまえの何千倍も生きるだろうよ。それに、わしの一日というのは、一年の、春・夏・秋・冬ぜんぶにあたるのだ。とても長くて、おまえには、かぞえることはできんだろうよ」