人形つかい
本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
旅まわりの人形つかいであるデンマーク人の男は、ある工科大学の学生との出会いを語る。男は人形が命を持つことを切望していたが、学生の導きでその願いがかなった際、生身の役者となった人形たちの身勝手さに直面する。この経験を経て、男は人形を操る現在の立場こそが幸福であると悟る。本作は、男が学生との不思議な邂逅と、その後の心境の変化について語る物語である。
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いかにも楽しそうな顔つきをした、かなりの年の人が、汽船に乗っていました。もし、ほんとうにその顔つきどおりとすれば、この人は、この世の中で、いちばんしあわせな人にちがいありません。じっさい、この人は、自分で、そう言っていましたよ。わたしは、それを、この人自身の口から、ちょくせつ聞いたのです。
この人は、デンマーク人でした。つまり、わたしと同じ国の人で、旅まわりの芝居の監督だったのです。この人は、一座のものを、いつもみんな、引きつれていました。それは、大きな箱の中にはいっていました。というのも、この人は人形つかいだったからです。この人の話によると、生れたときから陽気だったそうですが、それが、ある工科大学の学生によって清められ、そのおかげで、ほんとうにしあわせになったということです。
わたしには、この人の言う意味が、すぐにはわかりませんでしたが、まもなく、この人は、その話をすっかり説明してくれました。これが、そのお話です。
あれはスラゲルセの町でしたよ、と、この人は、話しはじめました。わたしは、駅舎で芝居をやっていたんです。芝居小屋もすばらしいし、お客さんもすばらしい人たちでした。といっても、おばあさんが二、三人いたほかは、みんな堅信礼もすんでいない、小さなお客さんたちでしたがね。
するとそこへ、黒い服を着た、学生らしい人がきて、腰かけました。その人は、おもしろそうなところになると、かならず笑って、手をたたいてくれました。こういう人は、ほんとにめずらしいお客さんなんですよ。そこで、わたしは、この人がどういう人か、知りたくなりました。人に聞いてみると、地方の人たちを教えるために、つかわされてきている、工科大学の学生だということでした。
わたしの芝居は八時におしまいになりました。だって、子どもたちは、早く寝なければいけませんでしょう。わたしたちは、お客さまのつごうを考えなければなりませんからね。九時になると、学生は講義と実験をはじめました。今度は、わたしが聞き手にまわりました。