「おそろしい話なのよ!」と、一羽のメンドリが言いました。
そこは、町のはずれで、このお話のできごとのあったところとは、なんの関係もない場所でした。
「むこうの、トリ小屋で起った、おそろしい話なのよ。あたし、今夜は、とっても、ひとりでなんか、眠れそうもないわ。でも、あたしたちは、こうやってみんないっしょに、とまり木の上にかたまっているからいいけれど」
それから、メンドリは話しはじめました。すると、ほかのメンドリたちは、毛をさかだて、オンドリたちは、とさかを、だらりとたれました。ほんとにそのとおり!
それでは、はじめから、ちゃんと、お話しすることにしましょう。さて、その出来事のはじまりというのは、町のむこうはずれの、トリ小屋の中で起ったことなのです。
お日さまがしずむと、ニワトリたちは、とまり木に飛びあがりました。その中に一羽、まっ白な羽をした、足の短いメンドリがいました。卵もきちんきちんと、よく生みますし、メンドリとしては、どこからみても申し分のない、りっぱなメンドリでした。このメンドリが、とまり木に飛びあがろうとしながら、自分の羽をくちばしでつついたのです。すると、そのひょうしに、小さな羽が一枚、ぬけおちました。
「あら、羽が一枚ぬけたわ」と、そのメンドリは言いました。「でも、いいわ。あたしは、羽をつつけばつつくほど、きれいになっていくんですもの」
もちろん、これは、じょうだんに言ったことなのです。なぜって、このメンドリは、仲間の中でも、ほがらかなたちだったんですから。それに、さっきもお話ししたとおり、たいへんりっぱなメンドリだったのです。それから、このメンドリは眠ってしまいました。
あたりは、まっ暗でした。メンドリたちは、からだをすりよせて眠っていました。ところが、そのメンドリのおとなりにいたメンドリだけは、まだ眠っていませんでした。このメンドリは、聞いても聞かないようなふりをしていました。だれでも、この世の中を無事に、のんきに、暮していこうと思えば、そんなふりをしなければならないものですがね。けれども、別のおとなりさんに、つい、こう言ってしまいました。