いまからずっとずっとむかしのこと、ひとりの皇帝がいました。皇帝は、あたらしい、きれいな着物がなによりも好きでした。持っているお金をのこらず着物に使って、いつもいつも、きれいに着かざっていました。皇帝は、自分のあたらしい着物を人に見せたいと思うときのほかは、兵隊のことも、芝居のことも、森へ遠乗りすることも、なにからなにまで、きれいさっぱり忘れているのでした。
とにかく、皇帝は、一日のうち一時間ごとに、ちがった着物に着かえるのです。ですから、よその国ならば、王さまは、会議に出ていらっしゃいます、というところを、この国ではいつも、「皇帝は、衣装部屋にいらっしゃいます」と、言いました。――
皇帝の住んでいる大きな町は、たいへんにぎやかなところでした。毎日毎日、よその国の人たちが大ぜい来ました。
ある日のこと、ふたりのうそつきがやってきました。ふたりは、
「わたしどもは、機織りでして、みなさんの思いもおよばない、美しい織物を織ることができます。それに、その織物は色とがらとが、びっくりするほど美しいばかりではございません。その織物でこしらえた着物は、まことにふしぎな性質をもっておりまして、自分の役目にふさわしくない人や、どうにも手のつけられないようなばかものには、この着物は見えないのでございます」と、言いふらしました。
「ふうん、それはまた、おもしろい着物だな」と、皇帝は考えました。「そのような着物を着れば、この国のどの役人が役目にふさわしくないか、知ることができるわけじゃな。それから、りこうものと、ばかものを見わけることもできるわけだ。そうだ、さっそく、その織物を織らせるとしよう」
そこで、ふたりのうそつきにたっぷりお金をやって、仕事にかかるように言いつけました。
ふたりは、機を二台すえつけて、いかにも働いているようなふりをしました。けれども、ほんとうは、機の上には、なんにもなかったのです。ふたりは、すぐに、
「いちばん上等の絹と、いちばんりっぱな金をください」と、願い出ました。