想片
本文約5,000字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
個人の真の自由と尊貴を重視する著者が、自身の「宣言一つ」を端緒に巻き起こった論議について綴る。唯物史観の根底には人間の精神的要求があるという独自のマルクス理解を示し、資本主義経済下で精神的交渉が排除される現状を批判する。自らの階級に縛られつつも、既存の教養を挽歌として捧げ、第四階級に対して異邦人として向き合う自身の現在地と、精神的欲求を完全な環境へと解放する社会のあり方について深く考察する。
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私が改造の正月号に「宣言一つ」を書いてから、諸家が盛んにあの問題について論議した。それはおそらくあの問題が論議せらるべく空中に漂っていたのだろう。そして私の短文がわずかにその口火をなしたのにすぎない。それゆえ始めの間の論駁には多くの私の言説の不備な点を指摘する批評家が多いようだったが、このごろあれを機縁にして自己の見地を発表する論者が多くなってきた。それは非常によいことだと思う。なぜならばあの問題はもっと徹底的に講究されなければならないものであって、他人の言説のあら探しで終わるべきはずのものではないからである。
本当をいうと、私は諸家の批評に対していちいち答弁をすべきであるかもしれない。しかし私は議論というものはとうてい議論に終わりやすくって互いの論点がますます主要なところからはずれていくのを、少しばかりの議論の末に痛切に感じたから、私は単に自分の言い足らなかった所を補足するのに止めておこうと思う。そしてできるなら、諸家にも、単なる私の言説に対する批評でなしに――もちろん批評にはいつでも批評家自身の立場が多少の程度において現われ出るものではあるが――この問題に対する自分自身の正面からの立場を見せていただきたいと思う。それを知りたいと望む多数の人の一人として私もそれから多分の示唆を受けうるであろうから。